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小澤 隆 小澤 隆

セカンド・オピニオン株式会社 代表取締役

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2017.06.15カテゴリ:企業再生
上場廃止後の有価証券報告書提出義務

会社の決算書を見る機会は仕事上でもとても多いのですが、有価証券報告書(上場企業の決算書)は情報量が多く、とても勉強になるので仕事に関係なくても眺めることが多いです。ニュースに登場してくる企業があると、とりあえず有価証券報告書や決算書を求めてしまうのは、もはや職業病です。

私にとって勉強になる有価証券報告書閲覧のケースに、業績悪化等で上場廃止になった後に何らかの方法で企業再建を目指しているケースがあります。有価証券報告書は「上場企業の決算書」と書きましたが、上場廃止になった後も、そのまま有価証券報告書を提出している会社は多いのです。そういうケースの有価証券報告書を眺めては、「なるほどねぇ」と思いに耽り、時間が過ぎていきます。

 

ところで、上場廃止後もなぜ有価証券報告書を提出しなくてはいけないのでしょうか?また、上場廃止後も延々と有価証券報告書を作成しなくてはイケナイものなのでしょうか?結論から言うと、

 

上場廃止後も原則として有価証券報告書提出義務が残ります。但し、
 (A) 株主数が25名未満 +承認を受けた場合
 (B) その事業年度を含む前5事業年度末日の株主数が全て300名未満+承認を受けた場合
 (C) 清算中や相当の期間事業を休止している場合
には提出義務が免除されます。

 


【かなりマニアックな条文です。】

金融商品取引法24条1項 (有報作成の根拠条文)

有価証券の発行者である会社は、その会社が発行者である有価証券(特定有価証券を除く。次の各号を除き、以下この条において同じ。)が次に掲げる有価証券のいずれかに該当する場合には、内閣府令で定めるところにより、事業年度ごとに、当該会社の商号、当該会社の属する企業集団及び当該会社の経理の状況その他事業の内容に関する重要な事項その他の公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして内閣府令で定める事項を記載した報告書(以下「有価証券報告書」という。)を、当該事業年度経過後三月以内(当該会社が外国会社である場合には、公益又は投資者保護のため必要かつ適当なものとして政令で定める期間内)に、内閣総理大臣に提出しなければならない。

ただし、当該有価証券が第三号に掲げる有価証券(株券その他の政令で定める有価証券に限る。)に該当する場合においてその発行者である会社(報告書提出開始年度(略)終了後五年を経過している場合に該当する会社に限る。)の当該事業年度の末日及び当該事業年度の開始の日前四年以内に開始した事業年度すべての末日における当該有価証券の所有者の数が政令で定めるところにより計算した数に満たない場合であつて有価証券報告書を提出しなくても公益又は投資者保護に欠けることがないものとして内閣府令で定めるところにより内閣総理大臣の承認を受けたとき (注1)、当該有価証券が第四号に掲げる有価証券に該当する場合において(略)、並びに当該有価証券が第三号又は第四号に掲げる有価証券に該当する場合において有価証券報告書を提出しなくても公益又は投資者保護に欠けることがないものとして政令で定めるところにより内閣総理大臣の承認を受けたときは、この限りでない。
一 金融商品取引所に上場されている有価証券 (注2)
二 流通状況が前号に掲げる有価証券に準ずるものとして政令で定める有価証券
三 その募集又は売出しにつき第四条第一項本文若しくは第二項本文又は第二十三条の八第一項本文若しくは第二項の規定の適用を受けた有価証券(前二号に掲げるものを除く。) (注3)
四 当該会社が発行する有価証券(株券、第二条第二項の規定により有価証券とみなされる有価証券投資事業権利等その他の政令で定める有価証券に限る。)で、当該事業年度又は当該事業年度の開始の日前四年以内に開始した事業年度のいずれかの末日におけるその所有者の数が政令で定める数以上(当該有価証券が同項の規定により有価証券とみなされる有価証券投資事業権利等である場合にあつては、当該事業年度の末日におけるその所有者の数が政令で定める数以上)であるもの(前三号に掲げるものを除く)。


 

この金商法24条1項が有価証券報告書(書くのがメンドクサクなってきたので、以下「有報」)作成の根拠条文です。上場企業はこの金商法24条1項1号(注2)に該当しています。上場廃止になった後は、金商法24条1項1号に該当しなくなりますが、上場時には通常、株式の募集・売り出しを実施しているので、金商法24条1項3号 ( 注3、有価証券届出書を提出した会社)には該当したままになり、上場廃止後も原則として有報提出義務が残ってしまうのです。

金商法24条1項本文但書で、(B)その事業年度を含む前5事業年度末日の株主数が全て300名未満+内閣総理大臣の承認を受けた場合(注1)は提出義務を免除する旨が定められてはいますが(金商法施行令3条の5第2項、企業内容等の開示に関する内閣政令16条2項を含む。)、各取引所の上場外形基準(最低株主数)を考えれば、上場廃止後すぐには有報提出義務の免除とはなりません。

 

ここで、さらに救済措置を定めてくれている条文があります。


【さらにマニアックな条文です。】

(金融商品取引法施行令4条2項)
2  金融庁長官は、前項の承認の申請があつた場合において、その者が ~(略)~直前事業年度までの事業年度に係る有価証券報告書については、その提出を要しない旨の承認をするものとする。
一  清算中の者
二  相当の期間事業を休止している者
三  法第24条第1項第3号に掲げる有価証券の発行者で、内閣府令で定めるところにより算定した当該有価証券の所有者の数が内閣府令で定める数未満である者

(企業内容等の開示に関する内閣府令)
令4条2項3号 に規定する内閣府令で定める数は、25名とする。


 

いや、分かりづらい条文の山です。要するに (A) 株主数が25名未満 となりかつ金融庁長官の承認を受けた場合は有報提出義務が免除されるのです! 、(B)その事業年度を含む前5事業年度末日の株主数が全て300名未満になるのが大変な場合は、減資等で株主数を25名以下にしてしまうのが一番早いことになります。

 

ところで、上場していないのに有報提出義務が残っていると、どんなデメリットがあるのでしょうか?この点を説明してくれている文献は、実は殆どありません。主観込みで解説してみようと思います。

上場していないのに有報提出義務が残っていると、どんなデメリットがあるのでしょうか?上場廃止理由や会社の状況等によってケースバイケースなのですが、一般論として以下のようなデメリットが考えられます。

(A)有報を期限内に提出しなくてはならない。
・連結決算が必須
・キャッシュフロー計算書の作成が必須
・半期報告書の作成・提出が必須

(B)会計監査人の監査を受けなくてはならない。

 

(A)有報を期限内に提出しなくてはならない。

有報を作成するには、それなりの人員とコストがかかります。収集・作成しなくてはならない情報量は膨大です。上場企業でなくなると、適時開示の対象外になるので、四半期決算や内部統制報告制度は必要ではなくなります。それでも、有報作成義務があるので、一般的な未上場企業の会計基準とは異なり、
・連結決算
・キャッシュフロー計算書の作成(連結ベース)
・半期報告書の作成・提出
が必須になっているのです。会社の規模が小さければ、連結決算は単純かもしれません。ただ国内だけでなく海外子会社があるような場合だと、決算スケジュール調整を含め、かなりの負担となるでしょう。

 

(B)会計監査人の監査を受けなくてはならない。

有報作成・提出の際には、上場・非上場に関係なく会計監査人(監査法人or公認会計士)の監査証明が必要です( 金商法193条の2 )。有報作成の負担も大きいですが、これらの監査対応及び監査報酬も大きな負担になります。非上場会社の有報を閲覧する人数なんて極めて限定的なのに、それでも監査証明が必須なのか?と個人的には思いますが、規則は規則です。それだけ有価証券報告書の意義が重いということなのでしょう。

なお、有報提出義務のある会社が提出を怠ると、有報の場合は監査報酬年額相当、半期報告書の場合は監査報酬年額の半額相当の課徴金が課せられます( 金商法172条の3 第1項&第2項 )。これを見ると、監査報酬コストが大きな負担になるであろうと想定していることがわかります。

 


 

(有価証券報告書等を提出しない発行者に対する課徴金納付命令)

第百七十二条の三  第二十四条第一項又は第三項(これらの規定を同条第五項において準用し、及びこれらの規定を第二十七条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、有価証券報告書を提出しない発行者があるときは、内閣総理大臣は、次節に定める手続に従い、当該発行者に対し、これらの規定により提出すべきであつた有価証券報告書に係る事業年度(当該発行者が第五条第一項(第二十七条において準用する場合を含む。)に規定する特定有価証券の発行者である場合には、当該特定有価証券に係る第二十四条第五項(第二十七条において準用する場合を含む。)において準用する第二十四条第一項に規定する特定期間。以下この条、次条第一項及び第百八十五条の七第三十一項(第五号を除く。)において同じ。)の直前事業年度における監査報酬額(第百九十三条の二第一項に規定する監査証明の対価として支払われ、又は支払われるべき金銭その他の財産の価額として内閣府令で定める額をいう。次項において同じ。)に相当する額(監査証明を受けるべき直前事業年度がない場合又はこれに準ずるものとして内閣府令で定める場合には、四百万円)の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。

2 第二十四条の四の七第一項(同条第三項において準用し、及びこれらの規定を第二十七条において準用する場合を含む。)又は第二十四条の五第一項(同条第三項において準用し、及びこれらの規定を第二十七条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、四半期報告書又は半期報告書(以下この章において「四半期・半期報告書」という。)を提出しない発行者があるときは、内閣総理大臣は、次節に定める手続に従い、当該発行者に対し、これらの規定により提出すべきであつた四半期・半期報告書に係る期間の属する事業年度の直前事業年度における監査報酬額の二分の一に相当する額(監査証明を受けるべき直前事業年度がない場合又はこれに準ずるものとして内閣府令で定める場合には、二百万円)の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。


 

完全に私見ですが、記課徴金(有報400万円+半期報告書200万円)に、会社法976条22号の会計監査人未選任の懈怠過料100万円を合計すると700万円になります。上場廃止後の会社の監査報酬が700万円程度に近似しているのは、この罰金との比較の結果なのか?と邪推してしまうことがあります。

このデメリット2点も、「ウチは再上場や経営健全化を考えているので、業務負担や監査コストを考慮しても上場企業と同等レベルのことを実施している点をメリットと判断する」というような非上場企業もあると思います。ですので、上記2点はあくまで一般論だと考えて下さい。

 

いずれにせよ、業績悪化等の理由で上場廃止になった後に、何らかの方法で企業再建を目指しているケースを閲覧させて頂いて勉強をさせて貰っています!

 

セカンド・オピニオン㈱
代表取締役 小澤隆