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カテゴリ:企業再生

少数株主の排除(特別支配株主の株式等売渡請求)

株主総会は、株式会社の最高意思決定機関で、決算承認とそれに伴う剰余金分配決議と役員の選任決議を行う定時株主総会と、合併や会社分割、株式交換などの重大な決定事項の発生する際に臨時に開かれるいわゆる臨時株主総会があります。

 

6月になると3月決算上場企業の株主総会が集中し、よく駅前で「〇〇株式会社 株主総会会場」のような案内板を持った人を見掛けませんか?そうです、アレです。

 

 

上場会社ではない未公開会社でも株主が多数存在しているケースはあります。経営破綻の危機にあるような会社では、株主の権利は債権者の権利と比較するとグッと低くなります。倒産すれば無価値です。しかしそれでも、企業再生の手続きの中で株主総会を開催しなくてはいけないことも多く、時間制約の中で積極的な事業改革を実施しようとすると、思わぬブレーキになることもあります。

 

このため、少数株主の排除(スクイーズアウト)は、企業再生人®にとっても大きなテーマです。従来は強制的な少数株主の排除というと、特別決議による「全部取得条項付種類株式」または「株式交換」の手法が常道でしたが、2015年5月1日施行の改正会社法により、「特別支配株主の株式等売渡請求が加わりました。

 

特別支配株主の株式等売渡請求制度

 

議決権の10分の9以上を有する株主(特別支配株主)が、特別支配株主以外の少数株主の有する株式の全部を、会社の承認を経て、少数株主の意向に関係なく、売り渡すよう請求することができる制度です。

 


【会社法条文】

会社法179条1項 株式会社の特別支配株主(株式会社の総株主の議決権の十分の九(これを上回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)以上を当該株式会社以外の者及び当該者が発行済株式の全部を有する株式会社その他これに準ずるものとして法務省令で定める法人(以下この条及び次条第一項において「特別支配株主完全子法人」という。)が有している場合における当該者をいう。以下同じ。)は、当該株式会社の株主(当該株式会社及び当該特別支配株主を除く。)の全員に対し、その有する当該株式会社の株式の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。ただし、特別支配株主完全子法人に対しては、その請求をしないことができる。


 

この制度のメリットはスピードです。以下が特別支配株主の株式等売渡請求制度の手続きですが、議決権90%を保有する株主にとって(1)~(8)のうち(4)法定の(4)取得日20日前通知を除けば、全て1日で実行可能です。即ち、最短20日+αで少数株主排除が可能なのです。

 

(1)特別支配株主から対象会社への通知(会社法179条の3第1項)。
(2)対象会社における承認(会社法179条3第3項)。
(3)対象会社から特別支配株主への通知(会社法179条の3第4項)。
(4)対象会社から売渡株主への通知・公告(会社法179条の4)。
(5)事前開示書類の備置(会社法179条の5第1項)
(6)売渡株式等の取得(会社法179条の9第1項)
(7)事後開示書類の備置(会社法179条の10第1項・第2項)。
(8)対価の支払い

 


【会社法条文】

会社法179条の3第1項 特別支配株主は、株式売渡請求(株式売渡請求に併せて新株予約権売渡請求をする場合にあっては、株式売渡請求及び新株予約権売渡請求。以下「株式等売渡請求」という。)をしようとするときは、対象会社に対し、その旨及び前条第一項各号に掲げる事項を通知し、その承認を受けなければならない。

会社法179条の3第3項 取締役会設置会社が第一項の承認をするか否かの決定をするには、取締役会の決議によらなければならない。

会社法179条の3第4項 対象会社は、第一項の承認をするか否かの決定をしたときは、特別支配株主に対し、当該決定の内容を通知しなければならない。

会社法179条の4第1項 対象会社は、前条第一項の承認をしたときは、取得日の二十日前までに、次の各号に掲げる者に対し、当該各号に定める事項を通知しなければならない。
①売渡株主(特別支配株主が株式売渡請求に併せて新株予約権売渡請求をする場合にあっては、売渡株主及び売渡新株予約権者。以下この節において「売渡株主等」という。) 当該承認をした旨、特別支配株主の氏名又は名称及び住所、第百七十九条の二第一項第一号から第五号までに掲げる事項その他法務省令で定める事項
②売渡株式の登録株式質権者(特別支配株主が株式売渡請求に併せて新株予約権売渡請求をする場合にあっては、売渡株式の登録株式質権者及び売渡新株予約権の登録新株予約権質権者(第二百七十条第一項に規定する登録新株予約権質権者をいう。)) 当該承認をした旨

会社法179条の5第1項 対象会社は、前条第一項第一号の規定による通知の日又は同条第二項の公告の日のいずれか早い日から取得日後六箇月(対象会社が公開会社でない場合にあっては、取得日後一年)を経過する日までの間、次に掲げる事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。
①特別支配株主の氏名又は名称及び住所
②第百七十九条の二第一項各号に掲げる事項
③第百七十九条の三第一項の承認をした旨
④前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

会社法179条の9第1項 株式等売渡請求をした特別支配株主は、取得日に、売渡株式等の全部を取得する。

会社法179条の10第1項 対象会社は、取得日後遅滞なく、株式等売渡請求により特別支配株主が取得した売渡株式等の数その他の株式等売渡請求に係る売渡株式等の取得に関する事項として法務省令で定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録を作成しなければならない。


 

実務上の留意点は、「承認の是非に関する取締役(取締役会)の判断」等いくつかありますが、大きな留意点は売渡株式等の売買価格の妥当性、すなわち株価評価だと思います。手続き上の瑕疵(不備)が無い限り強制的に排除される側からすれば、後は「では幾らで買い取るんだ?」しか論点がないのです議決権10%未満の少数株主は、常に株主の立場からはじき出されるリスクを持つ株主になりました。

 

この株価評価については、「特別支配株主の株式等売渡請求」に限らず、いつでも付きまとう論点です。この論点は、長くなってきたので別の機会に解説しようと思います。

 

セカンド・オピニオン株式会社 代表取締役
企業再生人® 小澤隆