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カテゴリ:資本金の壁

資本金の壁(2) 資本金1億円の壁

 

資本金1,000万円の壁とは「会社設立後2年間の消費税免税」が内容で、主として会社新規設立の場合の資本金設定が論点でした。

 

一方資本金1億円の壁は、資本金1,000万円の壁とは大きく異なり、継続企業の資本金設定を考える上で、とても大きな論点です。資本金1億円クラスの会社になると損益も数千万円単位~億円単位以上になってきて、「1億円の壁」の影響額も数千万円単位~億円単位以上になるからです。

 

1億円の壁

 

資本金が1億円を超えると、税務上下記の中小企業用の法人税・法人地方税の税務特典を失います。これを指して、「1億円の壁」と言います。

【中小企業用の法人税特典】
1.法人税の計算上、軽減税率(18%)が適用できる
2.交際費等の損金不算入
3.少額減価償却資産(上限年間300万円)…30万円未満の減価償却資産は全額損金算入
4.特定同族会社の留保金課税が対象外
5.欠損金の繰戻還付制度
6.欠損金の繰越控除制限の適用外

【中小企業用の地方税の特典】
7.法人事業税の外形標準課税が対象外
8.法人道府県民税及び法人市町村民税の均等割

 

しかし、上記の8点のうち、以下の4点、
1.法人税の計算上、軽減税率(18%))が適用できる
2.交際費等の損金不算入
3.少額減価償却資産(上限年間300万円)
8.法人道府県民税及び法人市町村民税の均等割

の影響額は、大局には影響しません。「資本金の壁」の説明では、この4点の税務的解説を詳細にしているものがありますが、全体観から言えば、ほとんど意味のない4点です。

 

1.軽減税率は最大96万円の節税効果:課税所得800万円×(30%-18%)
2.交際費等の損金不算入:最大216万円の節税効果:600万円×90%×40%(実効税率)
3.少額減価償却資産:最大120万円の単年度節税効果。長期的には節税効果なし。
8.均等割: 東京都23区の場合、最大33万円の節税効果

 

影響額を見ても、上記4点は思った程節税効果がありませんよね。中小企業向けの軽減税率等の優遇措置は、絶対金額で見るとたいしたことはないのです。大きな影響は

4.留保金課税
5.&6.欠損金の扱い
7.外形標準課税

にあります。

 

留保金課税(特定同族会社の留保金課税)

 

留保金課税とは、通常の法人税等を徴収したうえで更に課税する、極めて政策的な税制です。オーナー企業のような会社では、利益をオーナー個人に配当等で個人に還元せず社内に留保した場合、所得税回避を名目に懲罰的に税金を上乗せする仕組みなのです

 

個人的意見ですが、会社が稼いだ利益を配当でオーナー個人に還元させようが社内に留保したままにしようが、そんなものは会社の経営判断です。むしろ、個人に還元せず社内に留保して設備投資に回す経営姿勢は、賞讃されこそすれ懲罰的課税を受ける必要はないだろうと思います。ですが、税法は税法。一定のルールに従って留保金額に対し10%~20%の留保金課税が発生します。

 

オーナー会社のような非公開会社で、特定同族会社の要件に該当しない株主構成になることは、メリット・デメリット双方があり、どちらが良いとは一概に言えません。下手に株主が分散することでお家騒動になってしまう会社は数多あります。特定同族会社の留保金課税を受ける会社というのは、利益性の高い会社なので、継続的にこの留保金課税を受ける傾向にあります。その影響額は、利益が1億円以上なら配当等でその利益を個人に還元させない限り、常に利益に対し20%の留保金課税を上乗せさせられてしまうのです

 

このため、多くのオーナー企業(特定同族会社)は資本金1億円を選択することになります。資本金が1億円なのに規模の大きい未公開企業が多いのは、この留保金課税の存在に起因しています。

 

欠損金の扱いと外形標準課税

 

(A)欠損金の扱い

欠損金とは税務上の赤字のことで、正確には「欠損金の繰越控除」と言います。簡単にまとめます。会社の税額計算は単年度計算が原則ですが、会社の損益は常に利益が出るとは限らず、利益の出ている年度のみ課税をしていると、会社の複数年平均利益額と比較して税額比率が極めて高くなってしまいます。このため、複数年の平均利益金額に対して一定の税率になるような調整を図る制度です。

この「欠損金」の扱いは企業再生スキームを考える点でも大変気にする論点です。

資本金が1億円を超えると、この欠損金の使い方(調整)に制限がかかります。金1億円未満の際を100%とすると、資本金1億円超の場合50%しか使えません。

 

例えば過去大赤字になり、何とか赤字脱却により黒字化した場合でも、資本金1億円超になっていると、過去の赤字分を相殺しきれずに課税がすぐに発生してしまい、財務改善が遅れてしまうのです。損益状況を改善させるために「シャープ」や「吉本興業」といった大企業が資本金1億円を目指したのは、この欠損金の扱いを100%得るためでした。それくらい、この欠損金の扱いに制限があるのは大きなデメリットになるのです。

 

(B)外形標準課税

資本金1億円超の法人を対象とした法人事業税の課税制度で、会社の利益に関係なく人件費金額や資本金金額で一定の課税をする部分が生じます。つまり、赤字でもこの部分は常に発生します。似たような課税制度に法人地方税の均等割がありますが、均等割はせいぜい税額が最大数百万円であるのに対し、外形標準課税は会社の規模に応じて数百万円~億円単位以上に拡大します。元々、政策的に上場企業のような大企業を狙い撃ちにした課税制度なので、資本金が1億円超になっているというだけで、従業員数等の会社の実体規模にそぐわない会社がこの外形標準課税のカテゴリーに含まれてしまうのは、制度の欠陥だと思います。

 

このため、オーナー企業のような会社だけでなく、過去多額の損失が出てしまった大企業や上場廃止になった会社等も、会社の再生を図るために減資によって資本金を減らし、資本金1億円を目指すようになるのです。

 

(2回にわたる資本金の壁の説明は、少し疲れました)

 

セカンド・オピニオン株式会社 代表取締役
企業再生人® 小澤隆