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カテゴリ:企業再生

循環取引スキーム

2017年6月29日、スマートフォンフィルムなど合成樹脂の専門商社が、「平成29年(2017年)3月期有価証券報告書の提出期限延長に係る承認申請書提出に関するお知らせ」をリリースしました。

 

リリースでは「当社が行う海外取引の一部に関する、特定の相手方の6月22日付けの連絡等を踏まえて、当該取引の対象となる物品の実在性に疑義を抱くに至り~(省略)~しかしながら、当該取引は過去から継続して行われていたことに加えて、海外の関係者が存在する等~(抜粋)」とあります。東京商工リサーチの記事では、ストレートに「70億円の「架空取引」疑惑が発覚!」の記事の中で循環取引を指摘しています。

 

循環取引とは?

以下は、ウィキペディアによる「循環取引」の説明です。

循環取引(じゅんかんとりひき、英: Round-tripping)は、複数の企業・当事者が互いに通謀(つうぼう)し、商品の転売や業務委託などの相互発注を繰り返すことで、架空の売上高を計上する取引手法のこと。

循環取引においては、商品やサービスそのものは最終消費者・需要家に販売・提供されず、当事者・業者の間で転売が繰り返されているだけであり、本来の意味での売上(=消費)は発生しない。なお、商社や卸売業者では、一般に商品在庫の多寡を背景に、業界仲間内で保有在庫を転売し、在庫と資金(キャッシュ)の保有比率を適正に維持するための商取引が普及している。そのため、一般に商品の転売行為そのものが違法・不当として認識されているわけではなく、それを取り締まる法的根拠は無い。

しかし、循環取引では通謀し伝票をやり取りするだけで売上高が不正に操作できることから、企業の成長性を高いように仮装して金融機関の融資を容易にし、あるいは債券や株式の新規発行を有利に導く目的で行われることがあり、この場合は融資関連の調査資料や有価証券報告書に対する虚偽記載の容疑として立件・摘発の対象とされる。企業の営業責任者が売上ノルマ達成を目的として取引先業者と癒着し仮装している場合や、取引先からの短資融通を断れないまま手を染めている場合があり、内部監査や告発などにより経理資料が不公正な状態になっていることが発覚するケースも多い。

Wikipedia「循環取引」より

 

つまり、外部の協力者と共謀して、架空仕入と架空売上を計上し、売上高を大きく見せることが可能です。さらに利益金額をこの取引に付加させることで、売上・利益ともに大きく見せる(=粉飾決算)ことが可能になります。この循環取引は、取引当事者間の資金繰りが回っているうちは継続可能です。ですが、架空利益に対して法人税等を支払ったり、循環取引の取引金額が雪だるま式に増えることでその決済資金も雪だるま式に増加して、当事者間の資金繰りは激しく悪化の一途を辿ります。いつ破裂するか分からない時限爆弾(循環取引)を当事者間でババ抜きゲームのように渡し合い、破裂(資金決済が出来ない)した時には、資金未決済分の多額の不良債権が生じて、当事者全てが破綻しかねない取引です。

 

 

今回のケースは?

 

ちなみに当該会社は上場企業ではないのですが、有価証券報告書提出会社です。そこで平成28年3月期の財務内容をみてみると、70億円の損失があったとしても136億円超の利益剰余金や73億円程度の有価証券含み益を有しているので、破綻懸念には及びません。また、キャッシュフローの推移をみても、当該会社が会社全体でこの循環取引を主導したとも思えません。粉飾決算型ではなく、一部の関係者が売上予算達成やその他の理由で仕組んだ循環取引に、会社が引っかかってしまったといった感じでしょうか?

 

会社内には、こういった不正を防止する、「稟議制度」や「与信管理」「内部監査」等の内部統制機能があります。それでも循環取引は通常、そういった内部統制機能をもってしても「注文書や契約書、検収書が形式的に作成されており、実際に入金があるケースが多く、発見するのは困難」と言われます。ただ循環取引は、経営破綻を起こしかねないくらい金額が巨額に雪だるま式に増加していくので、必ず何らかの不正の兆候が見えます。この兆候を見逃して経営破綻してしまった「江守ホールディングス」の様な上場企業もあるので、「稟議制度」等も形骸化させずに実行していきたいものです。

 

セカンド・オピニオン株式会社 代表取締役
企業再生人® 小澤隆