企業再生人®ブログ

 
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カテゴリ:企業再生

起業アドバイスと企業生存率

 

最近、起業関連の質問が多くありました。要約すると、「どのように起業すれば良いのか?」という質問です。残念ながら起業アドバイスは企業再生人のサービスメニューにはないので、「わかりません」と答えて終わらせてしまいます。一方で質問者が期待している「答え」も薄々理解しているつもりで、

①起業に挑戦することは素晴らしく、それ自体が人生の成功のハズ。
②起業の方法には王道があるハズで、それを手っ取り早く知りたい。

の話をすれば喜んで貰えるのだろうなぁと思いながら、質問者の方は既に自分の中に答えを持っている中で、それに応じて話すことが自分には億劫なので、やはり「わかりません」と答えることにしています。こういう質問をする方に限って相手が無償で教えてくれるハズと思っている方が多く、その点でも積極的にお答えしようという気になりません。

 

私見ですが、起業についてアドバイスをしている方々は、自らが起業をしたことがないか、起業したとしてもビジネス・サイズが個人事業主クラスで、小規模企業者(製造業その他:従業員20人以下、商業・サービス業:従業員 5人以下)のビジネス・サイズを超えていない方がとても多いように感じています。その様な方からのアドバイスというのは、起業の中でも「個人事業主の成り方」か、「小規模企業者への移行」への特化したアドバイスだと考えています。質問者の要求水準と合致していれば良いのですが、そうでない場合には、そこに質問者のモヤモヤの原因があるのかもしれません。

 

企業生存率に関する都市伝説

 

そんな心の狭い私(笑)ですが、さすがに企業生存率に関する都市伝説への間違いは指摘しておきたいと思います。

 

国税庁のデータという触れ込みで、次のような企業生存率らしきデータがいろいろなサイトで紹介されています。

日本の会社380万社(正確には者)のうち
・設立1年で60%が倒産・廃業 生存率40%
・設立5年で85%が倒産・廃業  生存率15%
・10年以上存続する会社は6%
・20年以上存続する会社は0.3%
・30年以上存続する会社は0.025%
(「国税庁2005 調べ」・・・・???)

結論から言うと、これは都市伝説です。この「国税庁2005調べ」というデータがそもそも存在しません。もしかすると国税庁データではなく元データが別にあるのかもしれませんが、確認が取れません。

 

この企業生存率の都市伝説を元に
「このように企業が存続するのは大変」 → 起業するというのは、とてもハイリスクです。
「このように企業が存続するのは大変」 → 5周年、10週年を迎えたウチはスゴイ!
「このように企業が存続するのは大変」 → ウチのコンサルティングを受けた方が良いですよ。
のような論理展開が続いていくようです。

 

では、本当の企業生存率はどんなモノでしょう?
「都市伝説の国税庁2005調べ」以外の企業生存率調査資料を探してみました。

 

①中小企業白書(帝国データバンク協力)の調査資料

 

2011年版中小企業白書第3-1-11図には、1980~2009年に創設された企業の創設後経過年数ごとの生存率の平均値が紹介されています。この調査によると

1年経過後の生存率 97%
5年経過後の生存率 82%
10年経過後の生存率 70%
20年経過後の生存率 52%

となっています。10年経過後の企業生存率が70%で、都市伝説6%とは10倍以上も違います。思っていた以上に高い生存率です。

 

この①に反論する意見も散見されました。
・帝国データバンクのCOSMOS2には売上1億円未満のような規模の小企業が入っていない。
・これらの会社は売上・従業員規模も大きくシッカリリしているので、企業生存率がとても高い。

つまり、圧倒的多数を占める小企業の実態が反映されていないので、生存率が異常に高い!
なるほど、この資料では「調査母数」に問題があるという意見です。

 

② 2006年版中小企業白書

 

少し古くなるのですが、母数を拡大(製造業&従業員4人以上の事業所)した資料があります。開業後10年までの事業所について、それぞれ前年からの生存率を示した資料です。この事業所には会社と個人事業の両方が含まれています。

1年経過後の生存率  73%
5年経過後の生存率  42%( 73%×84%×87%×88%)
10年経過後の生存率  26%
20年経過後の生存率 - (資料なし)

都市伝説はともかく、他の企業生存率も調査母数が限定され一般的結論ではありません。残念ながら「企業生存率はコレだ!」というスッキリした調査報告がないのです。

 

③「開業率」と「廃業率」からの推論

 

ここで、調査母数が企業数全体の「開業率」と「廃業率」をみてみましょう。各社ごとの経過年数を集計したものではないので「生存率」には直結しないのですが、全体の趨勢は把握出来ます。

 

2009年~2012年間の全体開業率は1.4%、全体廃業率は6.1%と推計されています(個人企業を含む全企業ベース)。特に廃業率については、2001年から2012年まで6.1%前後で安定しています。もし、経過年数による補正なく全社平均的にこの廃業率が直線的に継続すると仮定すると、

1年経過後の生存率 94%(100%-6.1%)
5年経過後の生存率 73%
10年経過後の生存率 53%
20年経過後の生存率 28%

となります。中小企業白書2006年版が指摘するように、本来はこのように直線的な廃業率ではなく、「開業した直後は生存率が低く、その後年数を重ねるにしたがって次第に生存率が安定していく」のだとは思います。但し、国税庁データとされる都市伝説による企業生存率は、この開業率・廃業率から逆算してどのように企業数の経過年数別を推定しても統計的整合性が得られないと断言できます。驚異的に高い開業率で新規会社数が増えていかないと、残存企業数をとても維持できないのです。

 

また、廃業率は企業ごとの内部要因だけでなく、オイルショックやリーマンショック等、外部環境要因にも多く左右されています。つまり、企業生存率も各社の各社固有要素+外部要素も考慮しなくてはいけなく、経過年数補正も一概に結論づけられないとも思います。

 

企業生存率の結論

 

【結論】
調査母数の多い、そのものズバリの企業生存率集計はない。参考として以下の2つ。
  ☆帝国データバンクの調査資料
  ☆2006年版中小企業白書
巷に流布されている「20年以上存続する会社は0.3%」は明らかに都市伝説。
・2009年~2012年全体廃業率6.1%から、かなり大雑把に生存率を推測すると
  1年経過後の生存率   94%
  5年経過後の生存率   73%
  10年経過後の生存率 53%
  20年経過後の生存率 28%

となりました。なお、この結論はあくまで個人的見解です。今後どこかで実施される企業生存率の調査を待ちましょう。

 

セカンド・オピニオン株式会社 代表取締役
企業再生人® 小澤隆