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カテゴリ:企業再生

日本の寄付金税制は貧弱か?

 

米国は寄付社会と言われます。それに比べて日本は・・・という文言が続くことも多いのですが、実際のところ、どうなのでしょう?下記の表は寄付行為の日米英比較です。

(内閣府HP 「NPO基礎情報」より抜粋)

確かに差は歴然です。寄付総額の日米比較をすると絶対金額で30倍、対GDP比でも10倍以上の差があります。

米国の芸能人や有名スポーツ選手が高額な寄付金をした際に、寄付行為には米国の税制度が強く関係していて、「米国の寄付行為は税制が大幅に認めていて、税金を納付する代わりに寄付するのだ」のような論調を見ることがあります。「そういうものなのか」と私も思っていましたが、実際に日米の税制を比較してみると、あまり大きな差がないことに気付きます。

 

寄付金は所得控除(税額控除ではない)の対象

 

多くの論調は、税額控除と所得控除がごちゃまぜになっています。

例えば、あなたが競馬で2,000万円大儲けして1,100万円の税金を納付(税率55%)することになったと仮定しましょう。「せっかく自分の才覚で万馬券を当てて2,000万円も儲けたのに、所得税45%+地方税10%で合計55%も税金取られるのか!税金で取られるくらいなら、よぉし寄付してやれ!」と思うのは、とても人情味のある話です(笑)。

 

(ケース1:税額控除)
ここで1,100万円寄付をすると、税金もゼロになるのが「税額控除」です。儲けた2,000万円で、これに相当する税額1,100万円の支払い先を、税務署から寄付先に代えたようなものですね。「1,100万円の寄付行為をした」という名誉と共に、手元に900万円が残ります。こうなれば確かに、寄付行為は増加するでしょう。多くの方は、米国の税制に対してこのイメージを持っています。ですが、現実は違います。

 

(ケース2:所得控除)
実際の税制は「所得控除」なので、寄付先に1,100万円寄贈しても2,000万円-1,100万円=900万円の儲け相当に課税され、税金はゼロにならず495万円の税金が発生します。寄付金と税金を払うと405万円残ります。確かに寄付金1,100万円の寄贈によって税額は605万円減少しているのですが、(寄付金+税額)の総支払額は▲1,100万円から▲1,595万円に増えて、「1,100万円の寄付行為をした」という名誉と共に、しなかった場合より495万円手取りが減少して手元に405万円が残ります。

 

(ケース3:所得控除にすらならない)
所得控除にすらならない(損金不算入)場合は、常に2,000万円の儲けに対する1,100万円の税額が発生し、税引き後の900万円の中から寄付行為をすることになります。なお、495万円の寄贈をすると、「495万円の寄付行為をした」という名誉と共に、手元に405万円が残ります。

 

日本も米国も、税務当局が認定した寄付先(適格団体)にはケース2「所得控除」適用、そうでない場合はケース3「所得控除にすらならない」、と適用方針は同じです。所得控除の上限は米国が所得の50%、日本は40%ですが一部税額控除もOKなので、ほぼ同等です。個人ではなく法人からの寄付にすれば、国や自治体への寄付は全額損金、特定の公益法人等へも限度が緩和されている等、むしろ米国より条件は良いです。(このため日本では個人寄付と比較して法人経由の寄付が2倍超、米国は1/10以下になっています)。

日米の寄付金税制の大きな差は、主として認定先の範囲の広さです。米国では特定の米国内の宗教、慈善、文化、教育団体が適格とされていています。( IRS: Tax Information for Charitable Organizations)。その団体数は100万超と言われ、確かに日本の2万超とは大きな差があります。ただ、団体数は国内にほぼ限定されていますし、多くの宗教団体数が含まれていて、この点のみをもって、「税制に大きな差がある」とは言えないと思います。

 

日米で何が違うのか?

 

日米の差は、社会・文化の差異に起因していると思います。日本は、生活保護制度・失業給付制度・国民皆保険や高額医療費制度による個人支払いの限度額設定等、多くのセーフティネットが国(税金)によって設けられています。一方の米国では、従来から市民による寄付行為が一般的であり、「お金を持っている人が、貧しい人に分け与えるべきである」という宗教(特にキリスト教)影響もあって、国がセーフティネットを設けない代わりに各宗教団体がこの役割を担っています。私自身、先進国の中で国民皆保険を持つ「日本のセーフティネット」は最強だと思っています。他の先進国では、お金が無ければ病院にも行けず、何らかの理由でお金が無くなると、それこそ自己責任として「野垂れ死に」すらあり得ると思うのです。

国による直接支援のセーフティネット、慈善寄付行為によるセーフティネット、どちらが制度として良いのかは何とも言えません。日本のような国による直接支援のセーフティネットが存在した上で、家族による支援、慈善寄付行為が盛んになる社会が一番理想ですね。

 

セカンド・オピニオン株式会社 代表取締役
企業再生人® 小澤隆