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カテゴリ:企業再生

宝くじ購入の経済合理性

年末になると、一攫千金を夢見て宝くじ売場が賑わいます。今年の「年末ジャンボ(第731回全国)」宝くじでは、1等7億円、前後賞も含めると総計10億円と当選金が2ケタ億円です。最近、宝くじの売上が低迷気味なため、当選確率を低める代わりに当選金額を高騰させて、テコ入れ策としています。

さて、「宝くじを買うのは愚か者だ」のような話もチラホラ聞きます。個人的には「宝くじ」を買う・買わないは本人の嗜好であって、誰にも迷惑をかけていないのだから、どちらでも良いじゃないかと思います。少し考察してみましょう。

 

期待収益を考えれば、宝くじは非合理的?

宝くじは収益金の47%がごく少数の当選者に再配分される仕組みです。参加コストが53%と膨大なので、競馬・競輪・オートレース・競艇といった他の国営ギャンブルの約25%と比較すると、とても割の合わない再配分(還元)率です。1万円の投資(支払)に対し、期待値(平均当選金額)は4,700円という仕組みですから。1万円買うごとに、平均値で5,300円損する仕組みなのです。それでも多くの方が宝くじを購入するのはナゼなのでしょうか?

(「宝くじ公式サイト 収益金の使い道と社会貢献広報」より)

 

経済人(経済学用語で「経済合理性」を追求する人間モデル)としての判断が「期待値」のみを判断基準にしていれば。「宝くじ」を購入する行為は全否定されます。経済学では単純に「期待値」を判断基準にするのではなく「期待効用」を判断基準に「効用関数を最大にするよう行為することが合理的だ」と考えるとする説が有力です。

 

ちょっと分かりづらいですね(笑)

 

例えばあなたが100万円を得る機会があったとします。もしあなたが貯金ゼロの状態であれば、この100万円を得た満足度合(効用)は限りなく大きいでしょう。他方、この機会が何度も続いて貯金1000万円の状態であれば、今回100万円を得た際の満足度合(効用)は、最初の100万円を得た時よりもかなり小さくなるハズです。このように同じ100万円を得る機会であっても、その効用は逓減してしまうものであり(限界効用説)、人はその嗜好性でそれぞれ異なる効用関数を持っていて、その効用関数に応じた期待効用を最大化する行動をとるのです(期待限界効用説)。

 

「宝くじ」で得られる期待値(当選金10億円×当選確率)の効用は人によって全然違います。2~3億円前後と言われる日本人の平均生涯年収と比較すれば、それは「もう一生お金を稼ぐために働かなくていい状態」を入手できるのです。これを極めて高い効用と認識していれば、投資金額に対する期待値が低くても、その人にとって期待効用は大きくなり、充分合理的判断なのです。「自分は平均生涯年収2~3億円を超えてお金を稼げるとは思っていない」「今の生活環境から一発逆転で抜け出したいと切望している」場合も、期待効用はグッと高まるでしょう。

 

行動経済学による説明

最近では、人間は経済合理性を目指すものの、様々な思考バイアスや誤謬があって合理的判断を取らないというスタンスの行動経済学による説明も有力になってきています。例えば、確率の認識(捉え方)です。思考バイアスの一つに「小さい確率では人は確率を過大に認知し、大きい確率では逆に過小に認知する。」というものがあります。

 

発生確率1%の事象は、頭の中では100分の一よりも大きく認識されています。万が一なんて言いつつ結構悩むことは多いですからね。宝くじ1等の当選確率は1000万分の一程度なのですが、これが0.1%だろうと0.01%だろうと人の頭の中では一緒です。(数学的には0.1%と1000万分の一では1万倍の差があります)。このように、そもそも人の頭の中では「期待効用値」が数学的に正確に計算されていないという説明です。

 

宝くじ経済合理性の結論

さて長々と説明してきましたが、結論は

宝くじを買う行為は、理屈によって合理的とも合理的でないとも言える。

のです。期待値説だろうと期待限界効用説だろうと不確実性のプロスペクト理論だろうと、多くの方が買っている現状を見れば、多くの方にとって宝くじを買う行為は合理的なのです。人の楽しみを邪魔する余計な難癖は、平和のために止めましょう(笑)。

 

セカンド・オピニオン㈱代表取締役
企業再生人® 小澤隆