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カテゴリ:企業再生

減価償却と合理的判断

減価償却(げんかしょうきゃく)って聞いたことありますか?

収益を獲得するために貢献した資産については費用収益対応の原則により、取得原価を収益の獲得のために利用した期間にわたって費用配分するのが企業会計上望ましいと考えられる。しかし、建物や機械設備などの多くの有形固定資産については機能的・物理的な減価を容易に把握することが出来ないために、仮定された計算方法によって、可能な限り合理的となるように費用化している。
一方、特許権、商標権や漁業権、ソフトウェアなど各種権利の無形固定資産についても、減価償却を行うことがある。

(ウィキペディアより)

減価償却のイメージ例

例えば、Uberのドライバーが営業用の車を300万円で購入したとします。年間売上が400万円、車の耐用年数(使える期間)が3年だとすると、もし購入した初年度に300万円費用処理すると

【ケース1 減価償却を行わない】
01年度 売上400万円 費用300万円 粗利益100万円
02年度 売上400万円 費用 – 万円 粗利益400万円
03年度 売上400万円 費用 – 万円 粗利益400万円

とキャシュフローのとおりになります。いやでも車は3年間使うので会計的にはオカシイ。費用は3年間に渡って配分すべきだ。このケースなら、購入代金300万円を1年間100万円に分けて各年度に計上すべきだ!という考えが減価償却です。

【ケース2 減価償却を行う】
01年度 売上400万円 費用100万円 粗利益300万円
02年度 売上400万円 費用100万円 粗利益300万円
03年度 売上400万円 費用100万円 粗利益300万円

さて、減価償却はある仮定に基づいた計算による費用の期間配分です。このUberのドライバーのケースでも
・本当は何年間、この車は使えるのか?
・車の摩耗度合いは、経過年数に比例するのか?それとも放物線的に摩耗するのか?
・使い終わった時の残存価格(下取り価格)はいくらか?
などなど、購入時点では不明なことが多々あります。

そこで会社がバラバラに判断しないように、日本の税法はこの「仮定」を一律に決めています。そうすると、頭の良い方は「実際」と「仮定」の乖離に目を付けて、節税用金融商品を設定してきます。正確には「節税」では無く「利益の期間移転」なのですが、そういう目の付け所に感心します。

 

 減価償却とマクロ(ケインズ)経済学

話は急に変わるのですが、大学の授業で「経済学」は私にとって好きな授業でした。当時の教授から、「経済学は『答え』があるのではなく、経済の状況を色々な『仮定モデル』で説明しようと試みている学問です。古典派経済学やケインズ経済学、マネタリズムだろうと、その『仮定モデル』が完全に否定されない限り、どれも並存して正しいのです。」という話をとても良く覚えています。学校の授業というのは、基本的に「答え」を見つけるものだと考えていた私には衝撃的な話でした。異なる『仮定モデル』が並存して正しい・・・ 今風に言うと「価値観の多様性」でしょうか? 「こんなIS-LM分析が実践で何が役に立つんだ!」という勉強から逃げる言い訳を封印する、魔法の言葉でした。

 

閑話休題。会計用語の減価償却ですが、マクロ経済学でも登場してきます。例えば景気変動(景気の波)が起こる仕組みを減価償却で説明しようと試みています。

上述のケース2で、車の製造・販売会社は×1年度に300万円の販売利益を得るとします。一方で車の購入者は費用を減価償却によって100万円しか認識しません。すると、社会全体で会計上の利益が増加したように錯覚を起こす、という仮説です。つまり、「設備投資が活発な時期は、会計上の利益が増大し、社会全体がすべて利益を上げられているような錯覚が生まれ好景気となる。逆に、設備投資が低調な時期は会計上の出費が増大し、社会全体が損失を出しているような錯覚が生まれ不景気となる。」と景気変動・景気循環を説明しています。

 

「人間や市場は合理的判断をする」という古典派経済学から、「人間や市場は錯覚や誤謬によって認識間違いを起こし、合理的判断に至らない」という近年の行動(心理)経済学への変遷は、とても人間臭くて面白いです。

 

セカンド・オピニオン㈱代表取締役
企業再生人® 小澤隆