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カテゴリ:企業再生

源泉徴収票と支払調書

会社勤めの多くの方は12月の年末調整で個人所得税の税務申告が終了したと思います(給与収入が2000万円超だったり、一定の副収入がある方は更に「確定申告」が必要です)。この際、会社が個人に発行するのが「源泉徴収票」で、会社は同じ内容を個人と税務署に提出します

フリーランス等の個人事業主の方は収入金額に関係なく、必ず「確定申告」が必要になります。(あいまいな表現ではなく、冷徹な数字によって年収や税額を改めて目の当たりにすることになる瞬間です。)会社が個人の方へ報酬を支払った場合、一定金額以上の報酬については「支払調書」を作成し税務署に提出します。一方で会社から個人への支払調書の交付義務はありません。確定申告時の売上・源泉税額計算のためにも、「支払調書」が必要な方は、早めに会社側に依頼をしておきましょう。

 

そもそも源泉徴収って何?

源泉徴収とは、給与・報酬・利子・配当・使用料等の支払者が、それらを支払う際に所得税等の税金を差し引いて、それを国等に納付する制度です。源泉徴収された税金は源泉徴収税といいます。同様に事前に差し引かれる形態で、住民税なら「特別徴収」と呼ばれますし、健康保険料・年金等の社会保険料なら単に「徴収」と呼ばれます。

 

豆知識ですが、この「源泉徴収」の制度は第2次世界大戦前後に膨大な戦費を効率的に徴収出来るようにドイツで開始され、その後世界各国に広まりました。

イギリスが1799年にナポレオン戦争の戦費調達のために、貴族階級を課税対象に創設した所得税の徴収が源泉徴収の起源。その後、広く国民大衆を相手にする源泉徴収制度を制度として機能させたのはナチス・ドイツであり、第二次世界大戦後多くの先進諸国の税制に影響を与えた。アメリカ合衆国では、第二次世界大戦中の1943年に導入されたという。
源泉徴収の目的は、効果的かつ効率的な徴税手続の実現にあるといえるが、一方で納税者の納税実感を薄れさせ、民主主義の根幹をなす市民個々の参政意識を育むには阻害となるという欠点もある。

(略)

日本では戦費を効率的に集める目的でナチス・ドイツの制度にならい、1940年(昭和15年)4月1日に、給与への源泉徴収が始まった。戦後1947年(昭和22年)のGHQ軍政下の税制改正で、一定の給与所得者に対しての税額精算は年末調整制度を導入することになった。しかし、GHQはアメリカ流の民主的申告納税制度の例外となる年末調整制度を渋り、1949年のシャウプ勧告では年末調整は税務署にできるだけ速やかに移管すべきとした。
(ウィペディアより抜粋)

 

源泉徴収制度の暴走

源泉徴収制度は、本来の納税者(個人)と支払義務者(会社)が異なるため、その法的根拠が常に問題になります。日本の所得税は建前上「申告納税制度」が原則です。申告納税制度は,本来の納税義務者が自分の税額を自ら計算し納付するという点で、日本国憲法における国民主権の原理に合致していて、本来の納税義務者自身が行政の金銭的基礎を支えつつ、重要な行政事務の一端を担っているという自覚すると考えられるからです。(「源泉徴収制度の問題点及びあり方の再検討 ~徴収義務を課すことの解釈上の限界を中心に~」立命館大学 参照)

一方で日本の現実は、例外的な「源泉徴収」制度が個人所得税の80%以上の納付率を占めるほど原則になっています。特に世界に例を見ない「年末調整」制度は、本来の納税義務者(個人)が痛税感を失うほど納税手続きから分断されていて、納税に関する「国民主権」や「民主主義」の建前は吹っ飛んでいますね。

源泉徴収制度の合憲性が争われた事件において、日本の最高裁判所は1962年2月28日、以下の通り判示して合憲とした。
「源泉徴収制度は、これによって国は税収を確保し、徴税手続を簡便にしてその費用と労力とを節約し得るのみならず、担税者の側においても、申告、納付等に関する煩雑な事務から免がれることができる。また徴収義務者にしても、給与の支払をなす際所得税を天引しその翌月一〇日までにこれを国に納付すればよいのであるから、利するところ全くなしとはいえない。されば源泉徴収制度は、給与所得者に対する所得税の徴収方法として能率的であり、合理的であって、公共の福祉の要請にこたえるものといわなければならない。」
(ウィペディアより抜粋)

 

徴収手続きの簡便化は良いのですが、その労力・コストを国が支払義務者(会社)に押し付けるだけでなく、徴収責任も転化している現状は会社側からみれば「そこまで要求するならコストを支払え!」と言いたくなります。源泉対象になるかどうか曖昧なケースというのはかなりあって、本来は納税義務者がその最終責任を負うものですが、現在の源泉徴収制度では、まず会社が責任を負うことになるからです。(国は会社に請求すれば良く、その後会社が個人に請求することになる)。源泉徴収だけでなく他の天引き項目も含めて徴収手続き制度を一本化し、国と本来の納税義務者の個人がダイレクトに関係する本来の姿になればと思います。(IT技術的には充分可能です)

 

セカンド・オピニオン㈱代表取締役
企業再生人® 小澤隆

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