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カテゴリ:企業再生

粉飾決算による上場廃止

前回のブログ記事で2017年の倒産件数の統計を話題にしましたが、2017年1年間に上場企業で倒産したのは2社あり、1社は「タカタ」でもう1社は「郷鉄工所」という東証2部・名証2部の会社でした。「郷鉄工所」の場合は、2017年9月に上場廃止、翌10月には自己破産申請になっています。

 

「第三者委員会」による「調査報告書」

「郷鉄工所」の場合、本業が傾きだしてからの転落振りと惨状が上場企業とは思えないほどです。普通はそういった状況は外部にあまり漏れないのですが、上場企業であるので「適時開示」として部分的にオープンになっていて、「郷鉄工所」の場合は粉飾決算もあったことから「第三者委員会」の設置と、その「調査報告書」も一般に開示されています。

第三者委員会(だいさんしゃいいんかい)とは、何らかの問題が起きたときに、当事者以外の外部の有識者によって危機管理体制の再構築を迅速、確実に行うなどの目的で問題を検証をする委員会。
ウィキペディア より)

2017年6月23日に「郷鉄工所」(以下「会社」と言います。)によって公開された「第三者委員会の調査報告書(公開版)」は122ページにも及ぶ量で、社長を含む経営陣によっての粉飾行為への疑義が記されています。会社がその後、追加調査を予定していましたが、この粉飾行為の訂正決算を実施することが出来ず上場廃止が確定的になります(2017年8月10日「場廃止の見込みに関するお知らせ」)。また追加調査の費用も捻出できなかったことから、追加調査自体も中止になりました。(2017年8月25日 第三者委員会による追加調査の中止に関するお知らせ

第三者委員会の調査報告書の内容

調査報告書から部分抜粋してみました。会社と社長以下の経営陣が何とか会社を立て直そうと奔走するのですが、残念ながらその奔走の方向性が大きく誤っていて、会社の破産しか選択肢をなくしてしまう転落振りが良く分かります。

当委員会としては、上記確認書の記載の内容が判然としなかったため、G社(=郷鉄工所)役員らに説明を求めた。しかしながら、G社役員らからは、曖昧かつ要領の得ない回答しかなされず、むしろ当委員会による全容の解明をできるだけ回避しようとしているのではないかとの印象を抱いた

当委員会としても、当初は、G社からの自主的な申告や説明等により、本件問題の全容が明らかになることを期待していたが、調査の過程でかかる方法による真相解明は不可能であると判断し、暗中模索ともいうべき状況の中で、大量の資料の調査と多数のヒアリングを実施し、断片的な事実を一つずつ分析検討することで、本報告書の結論に至ったものである。

(調査報告書 P.25)

会社側は、上場維持のため「第三者委員会」を設置して自らを調査するという建前は演じたものの、その調査には非協力的でした。それもその筈で、社長以下自らが主導して不明瞭な取引・粉飾行為を実施していたのですから。

≪資金調達・G社還流パターンにあたる工番について≫
上記のとおり、G社は、X社からの仕入取引の支払という通常の商取引を装い、G社からX社などに振り出している約束手形を、X社等が金融機関等で割り引くなどして現金化し、G社に還流させていた。

(調査報告書 P.46)

会社は本業の損益の落ち込みが激しく、新規事業として太陽光事業に会社再建の可能性を求めます。しかし、本業の赤字を新規事業で穴埋めするような博打はそうそう上手くいきません。すぐに不振状態になり、この事業は『外部の第三者会社を使った融通手形の発行による資金還流スキーム』になり下がります。こういった異常な資金調達は、大抵法外な手数料・利息を支払う羽目になるのですが、調査報告書では年率計算で50%~150%前後だったのではないかと推定しています(調査報告書P.50~52)

経営不振に陥り、銀行等の金融機関からの借入が困難になると、高金利の資金調達に踏み込んでしまうケースを見かけます。ただ経営不振になった中で高金利による借入返済など出来る訳がありません。資金繰りの自転車操業になり、破経営綻に向かって加速するだけなのです。

この時点で上場維持を諦め、民事再生法の申請等の再生案を選択していれば、まだ会社存続の可能性は高かったと思います。上場維持目的なのか、地元名門企業としての対外的見栄や意地なのか、経営陣は目先の資金繰りと粉飾決算による一時しのぎという、経営破綻必至の最悪な選択肢に手をつけてしまいました。

また、同日、X社から本件確認書作成にあたり、社長より「債務超過が膨らみ問題になるので確認書に捺印して戻してもらえないか。そうしないと監査法人に決算書に印をもらえない。大変なことになってしまう」と説明があったこと、その際、X社のA氏が「それは粉飾決算に加担するものですか?」と質問するも社長らは明確な回答をしなかったこと、(本確認書を表に出すならば)X社はG社株主として法的措置を検討すること等が…

(調査報告書 P.70)

一度ついたウソは、そのウソを隠すために更に大きなウソを重ねていくことになります。監査法人が取引への疑義を示すと、これを隠蔽するために架空の確認書作成を外部に求める有り様です。1件の融通手形スキームが、架空売上や融通手形スキーム規模の拡大等、急速に雪だるま式に拡大していきました。

上記のとおり、G社が本件取引を実行する意思があったとは到底見受けられず、本件取引は実現可能性がほぼない、実体のない取引であったと判断できる。

そして、本件取引を平成28年3月期の売上として計上するために、平成28年3月29日に駆け込み的に契約書を作成していること、G社において本件取引を実行に移す動きがないこと等からすれば、少なくとも社長及びB専務においては、本件取引が実現可能性がないもしくは極めて低い取引であることを認識しながら、平成28年3月期の売上として計上することを主たる目的として本件取引を行ったものといえる。

そのような取引を決算上計上しようとしたことは、粉飾決算となる可能性があることを認識し、もしくは容易に認識し得た行為であるといえ、本件取引は粉飾決算目的の取引であった可能性が極めて高い。

(調査報告書 P102-103)

太陽光事業だけでなく、最後は怪しげな不動産取引を仮装して債務超過回避を図ります。ここまで来ると、もう何の事業をしている会社が分かりません。

 

一生懸命会社を支えたという勘違い

(社長がA氏に宛てた電子メール)
送信日時:平成28年11月24日
内容:今は役員全員がズタズタになっても会社を支える時ではないでしょうか、緊急事態な んです。理屈や道理で会社は救えません 。わかって下さい。

(社長がB専務に宛てた電子メール)
送信日時:平成28年12月19日
内容:各位にお願い、 現在の状況下でのB専務の資金繰り努力は厳しいものを感じます、 私はB専務の提案に賛成します。会社法より会社優先をお願いします。

(社長がD氏に宛てた電子メール)
送信日時:平成29年4月21日
内容:今日の役員会で第三者委員会が決定する、私は欠席、そろそろ潮時と思っている会社 に未練はない、一生懸命支えてきたが・・・・

(社長がB専務に宛てた電子メール)
送信日時:平成29年4月22日
内容:昨日の役員会で第三者委員会が決定した、私にも潮時が来た、遅かった、会社に未練はない、一生懸命支え40年貢献したつもり、ウルトラCはないのか?

(調査報告書 P111~112)

社長の考えが分かる生々しいメールです。

「会社を存続させるため」に奔走したのは事実でしょう。ただ「隠蔽」「仮装取引」「粉飾行為」に基づく会社存続施策は、百害あって一利無しですし、そのようなもとでは企業再生はありえません。「従業員のため」という大義名分のもと無意識でも「自己保身」が図られていたのだと思います。勇気を持って真っ当な再建策を取っていれば、従業員を全員解雇するような状態にはならなかったことでしょう。

一部報道では、このような資金還元スキームによる不正資金調達や粉飾決算狙いのスキーム等の画策に、反社会勢力の介在が指摘されています。いずれにせよ、会社の経営陣がその画策に乗ったのは事実です。

 

結局、「郷鉄工所」は2017年9月11日に上場廃止になり、同日全従業員79人解雇。事業停止となります。翌10月20日に自己破産申し立てになりました。

 

セカンド・オピニオン㈱代表取締役
企業再生人® 小澤隆

 

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