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カテゴリ:企業再生

キュービーネットHDとIFRS

アベノミクスが本格化した2014年以降、日本市場のIPO(新規上場)数も高水準で推移しています。1990年代後半のバブル崩壊以降「失われた20年」を彷徨い、リーマンショック直後の民主党政権(2009-2012)時代は、2009年31件、2010年36件と現在の3分の一程度の件数なので、隔世の感があります。

日本取引所グループ 新規上場会社情報

2018年も3月までの3か月間で17件のIPOがありました。その中で、「おや?」と思ったIPO銘柄に「キュービーネットホールディングス株式会社(東証1部 2018年3月23日上場)」があります。10分1,000円のヘアカット専門店QBハウスを全国展開している会社です。

 

キュービーネットHDの上場劇場

何が「おや?」と思ったかというと、この会社はIFRS(国際会計基準)を適用していたからです。QBハウスは659店舗のうち、香港・シンガポール等海外に117店舗を展開しています(2017年6月30日現在)。海外展開志向でIFRS(国際会計基準)を適用していると思いたいのですが、バランスシートを見るとそう単純には納得できないところがあります。

創業者である小西氏が株式上場を断念したのが最初だとすれば、1号店出店から10年後の2006年にオリックスに譲渡したのが2度目。結局、オリックスは30億円で買ったキュービーネット(当時)の株式を2010年、ジャフコに100億円で売却したので利ザヤは稼いだが、オリックスも上場は果たせなかった。
そして2014年、3度目の正直も叶わなかったジャフコが買値と同じ100億円で、インテグラルに売却している。

(略)
4度目の正直でキュービーネットHDの上場を果たすこととなった。

NEWSポストセブン(文/河野圭祐(『月刊BOSS』編集委員)2018年2月28日配信

キュービーネットHDは何度もIPOに挑戦していますがとん挫し、その間に創業者→オリックス→ジャフコ→インテグラルと、Fund to Fundの会社売却が続きます。その売却はLBOスタイルだったので、その過程で会社は150億円を超える「のれん」とそれに対応する借入金127億円を計上しています。

QBハウスのビジネスモデルはとてもシンプルです。店舗は全店舗のうち87%超が直営(業務委託27%を含む)店舗ですが、1店舗当たりの設備投資額はそれほど大きくないため、店舗用固定資産も合計簿価で23億円程度です。このため極めてシンプルなバランスシートを予想するのですが、実際には総資産の65%を占める「のれん」と、負債の大部分を占める借入金の存在が突出しているのです。

この「のれん」は、以前の株主がキュービーネットHDを売却した際に「将来利益の先喰いをした」とも言えます。この「のれん」の会計処理が、「日本基準」と「IFRS」では大きく異なっていて、日本基準では、のれんを20年以内の期間で均等に償却しますが、IFRSでは減損テストをし、減損の兆候がなければ費用計上はしません。

仮にキュービーネットHDが日本基準を適用して「のれん」を20年均等償却したとすると、毎年のれん償却費(販管費)7.7億円のコスト増になり、営業利益が半減してしまうのです。

 

「のれん」とIFRS

「のれん」の会計処理は古くて新しい会計処理のテーマです。「のれん」会計処理の日本基準とIFRSとの差異は、M&Aが活発な会社で特にその影響が大きいと認識していました。今回のようなケースを見ていると、M&Aだけでなく、LBOで非上場会社化された会社の再上場等、IPOでExitを図るファンド流IFRS適用は、新しい潮流になりそうな予感がします。

 

セカンド・オピニオン㈱代表取締役
企業再生人® 小澤隆

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