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カテゴリ:企業再生

民事再生法の濫用

民事再生法とは、株式会社が経営破綻に陥った場合に、現経営陣の下でも債務カットを中心とした法的手続きによって、簡便かつスピーディーに会社の自己再起を目指す手続きを指します。破産と違って、会社・事業の継続と再生を目指すのです。

4月9日、東京地裁へ民事再生法の適用を申請した(株)スマートデイズ(設立平成24年8月2日、資本金11億20万円)は4月18日、東京地裁より民事再生法手続きが棄却され、同日保全管理命令を受けた。
(略)
こうしたなか、当社の資金繰りは改善しなかったことから4月9日、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。12日に開かれた債権者説明会では、出席したオーナーから民事再生への異論が噴出。席上、申請代理人を務めた南賢一弁護士は「破産を念頭に置いた暫定としての民事再生だと私個人としては思っている」と述べていた。

東京商工リサーチ 2018年4月18日配信

この記事を見た方は混乱したかもしれません。「破産を念頭に置いた暫定としての民事再生」とは何なのでしょう? 「申請代理人の弁護士として、会社は殆ど破産状態と認識しているが、会社側の意向に沿って、ワンチャンスを狙ってとりあえず民事再生を申請してみた」くらいの意味でしょうか?

 

「倒産」の定義

日常的に使用する「倒産」という言葉は、法律用語ではありません。一般的には「企業経営が行き詰まり、弁済しなければならない債務が弁済できなくなった状態」を指します。具体的には、以下に挙げる6つのケースのいずれかに該当すると認められた場合を「倒産」と定めます。
1 銀行取引停止処分を受ける※1
2 内整理する(代表が倒産を認めた時)
3 裁判所に会社更生手続開始を申請する※2
4 裁判所に民事再生手続開始を申請する※2
5 裁判所に破産手続開始を申請する※2
6 裁判所に特別清算開始を申請する※2
※1 手形交換所または電子債権記録機関の取引停止処分を受けた場合
※2 第三者(債権者)による申し立ての場合、手続き開始決定を受けた時点で倒産となる

倒産は会社を清算(消滅)させる”清算型”と、事業を継続しながら債務弁済する”再建型”に分けられます。
清算型:「破産」「特別清算」、大部分の任意整理
再建型:「会社更生法」「民事再生法」、まれに任意整理の一部

帝国データバンクHP「倒産の定義」より

 

銀行取引停止処分を受けても法的に会社の存続が止まる訳ではありません。しかし、銀行取引が出来ない(一部の銀行でなく、全銀行との取引が出来なくなる状態)ということは、外部とのお金のやり取りで銀行振込すら使えなく現金決済しか出来ないわけで、業務停止状態に陥るのです。このような会社との取引を取引先が許容する訳はなく、仮に現金決済のみで業務継続しようとしても早晩業務停止になってしまいます。

さて、この倒産の定義に含まれる会社のうち、

3 裁判所に会社更生手続開始を申請する
4 裁判所に民事再生手続開始を申請する

は事業を継続しながら債務弁済する「再建型」と呼ばれ、倒産とはいっても会社が継続するので、事業停止となる破産とは大きく異なります。銀行や取引先は大きな損失を被りますが、一般個人顧客にはあまり影響が無いので、会社更生手続きや民事再生手続きがあったことに気づかない一般個人顧客も多いかもしれません。

縮小したり、別企業のスポンサーの傘下のもと別会社名となったりしたとしても、会社が消滅してしまう倒産とは違って、従業員の職場が継続可能という意味でも大きく異なると思います。

 

一方で、

2017.07.20 「民事再生法」適用企業の追跡調査(東京商工リサーチ)

でも紹介しましたが、民事再生法を申請しても生存できる企業(生存企業率)は29.1%と3割に満たないのが現実(東京商工リサーチ調べ)です。

自力再起を目指して、民事再生法の手続きの中で既存債務の90%カットがされたとしても、信用棄損だったり、新規の資金調達が事実上不可能だったりと、その前途はとても厳しいのです。

 

民事再生法の濫用

私が直面した企業再生案件の中で、経営破綻に陥った会社が、買収&全債務を100%肩代わりするオファーがありながら民事再生法の適用を進めていた案件がありました。民事再生法では経営者の刷新が要求されていないので、買収によって経営権を奪われることを回避しようとしたのだろうと推測しましたが、株主や債権者に損失を被らせることを前提として経営権の維持を図る姿勢は言語道断だと思いました。

また、この状態で代理人として民事再生法申請に持ち込んだ弁護士法人に対しても、「どういうモラルをしているんだろう?」と驚愕したのを良く覚えています。1回目の債権者説明会で、「どうせこの代理人の弁護士達に文句を言っても無意味だろう」と思い、同席していた監督委員に強く「こんな茶番はおかしい!」とまくしたてたのを覚えています。

 

(株)スマートデイズのケースも、「破産を念頭に置いて」いる位なら、自力再起を装って会社の正当性をアピールすることをせず、最初から破産手続きに向かって無用な混乱を避けた方が良かったのではないか?と思います。

 

セカンド・オピニオン㈱代表取締役
企業再生人® 小澤隆

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