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カテゴリ:企業再生

上場企業のお家騒動 - 解任社長からの反撃 –

大塚家具(東証JASDAQスタンダード8186)は、2018年12月期の業績予想を黒字から、3期連続の赤字に大幅下方修正しました。父娘の親子間でのお家騒動で世間から注目された大塚家具です。

2014年7月に父・勝久会長(当時)から業績不振を理由に久美子社長は一度、社長解任されます。しかし、その後も業績不振は脱することが出来ず、2015年1月に取締役会で久美子社長が復帰しました(取締役7人のうち4人が賛成、勝久氏及び長男勝之専務を含む3人が反対という僅差)。その後、創業者一族同士による委任状争奪戦に発展し、同族経営の上場企業として異例の経営対立を生み、「お家騒動」「(公開)親子喧嘩」などと報じられました。(ウィキペディア参照)

大塚家具は「資本増強や業務提携について多面的に検討している」とし、一部報道された自主再建が困難な状況で「身売り」を否定も肯定もしていません。この「お家騒動」の結末がどうなるかは、個人的には、とても興味深いです。

 

大塚家具の場合は、創業者一族という大口株主同士での「お家騒動」でした。このケースとは別に、過半数以上を有するオーナー株主兼社長に対してクーデターを仕掛けた「お家騒動」の例があります。アルファクス・フード・システム( 東証JASDAQグロース 3814 )のケースです。

 

支配株主&社長へ仕掛けられたクーデター劇

同社の社長解任劇のあった2014年10月の臨時取締役会から、反撃により復活した同年12月定時株主総会までの時系列です。

まさしく激動の約2か月間です。なお、解職の対象となった田村氏は、同社の創業社長というだけでなく、発行済株式数約48%(自己株式を考慮した議決権ベースでは51%超)を有する支配株主でもあります。取締役会の過半数により代表取締役を解職して社長解任に成功しても、社長側の反撃で株主総会によりクーデター側の取締役が解任されてしまえば、この社長解任劇は失敗です。

ここで同社が上場企業という点が重要になります。上場企業は取締役会決議のみで第三者割当増資が可能で、これにより大株主の議決権比率を変更することが出来るからです。(未上場会社の場合は、株主総会決議でのみ議決権比率を変更出来る増資等が可能なので、社長が支配株主の場合は取締役会で社長解任劇が成功しても、意味がありません。)

 

【注意:ここからは、私自身の個人的見解、推測が入っています。】

 

取締役会で社長解任劇が成功しても、株主総会でクーデター側の取締役解任が生じない様にしなくてはいけませんが、その為に必要な第三者割当増資も無制限に可能な訳ではありません。自分達の意を汲んでくれる増資引受先の存在と、第三者割当増資の合理性が必要です。このため、以下の様なストーリーとなりました。

①取締役会で代表取締役の解職(社長解任劇)

②決算発表+第三者割当増資の公表
・決算は大幅赤字へ転落。
・会社は大きな転換期 ⇒ 大型投資が必要。
・これらにより第三者割当増資の必要性と合理性を確保。
・増資引受先と第2位株主に対し事前賛同を得る。

③株主総会前に第三者割当増資の払込実施
・株主総会前に、クーデター派が議決権ベースで田村氏の持株比率を上回る。

④株主総会開催

 

社長解任劇の後、「臨時株主総会の招集」を始めとする株主としての反撃をかわしながら第三者割当増資を早期(株主総会開催前)に実施しなくては、このクーデターは成功しません。本来であれば社長解任劇の後、1日でも早く第三者割当増資の実施をしたかったでしょうが、社長解任劇後あまりに早く実施してしまうと、第三者割当増資の目的が「支配権の維持」とみなされて合理性が成立しません。このため、定時株主総会から逆算して、第三者割当増資払込日、第三者割当増資の取締役会決議日を想定し、第三者割当増資の取締役会決議日の約1か月前の2014.10.18が社長解任劇のXデーになったのだと思います。

 

会社が2014.11.12に公表した「第三者割当による新株式の発行および主要株主並びに親会社以外の支配株 主の異動に関するお知らせ」にあるような、 「各取締役及び部門長等のヒヤリングを行い、課題解決のため早急に資金調達が必要であることを確認」⇒ 第2位株主(議決権約20%保有)との相談 ⇒ 増資引受先の選定・価格の交渉 ⇒ 第3者委員会の設定を始め各手続進行 といった一連の流れは、3週間程度の期間に完結するにはあまりにスピーディーで出来過ぎなストーリーです。

 

個人的見解と推測ですが、支配株主に対して社長解任劇を仕掛けるにはそれなりの勝算があった筈で、これらの登場人物や設定は用意周到に事前準備されていたと見る方が自然です。また、この「お知らせ」にある「本第三者割当の目的及び理由」を読んでも、必要性はともかく、この短期間に実施しなくてはならない緊急性は私には理解できませんでした。 会社の業績は低迷気味ではありますが、会社の主張する緊急性を見出せないのです。

 

クーデター側は、クーデター側顧問弁護士やコンサルタント等の知恵を借りて、事前に多くの準備・シュミレーションをしていた筈です。田村氏は代表取締役を解職されたとはいえ、取締役の地位はそのままなので、クーデター側の行為(取締役会決議)は全て筒抜けになるからです。そして社長解任劇後も、会社側は法律違反や手続き瑕疵が生じない様に慎重に事を進めていたことが窺われます。

 

解任社長からの反撃

田村氏側が反撃手段とした「臨時株主総会の招集」や「第三者割当による新株式発行の差し止め仮処分の申し立て」も想定の範囲内だったことでしょう。田村氏側にあまり時間的猶予を与えず、第三者割当増資を実施した上で株主総会を開催してしまうことが、クーデターが成功する必須条件でした。

 

ただクーデター側には1点祖語が生じます。取締役5名のうち田村氏を除く4名及び監査役3名のうち2名は、事前のストーリーに賛同したのですが、常勤監査役の1名が田村氏側についたままだった点です。クーデター側では監査役全員が、「第三者割当増資は有利発行にはあたならい旨表明する」と想定していたのですが、この部分に変更が生じ、有価証券届出書の再提出となり、第三者割当増資の払込日が1週間遅延します。

何より、監査役会を構成する監査役3名のうち非常勤監査役2名が第三者割当増資に賛同しても、会社の状況を良く知る常勤監査役1名が強固に反対している外形的事実は、差止仮処分の申し立てを審理した裁判官の心証に大きな影響を与えたのではないかと思います。

 

解任社長からの反撃によりクーデター側が失脚

こうして、第三者割当増資の払込が予定されていた2014.12.05の前日に、田村氏側の主張どおり「第三者割当による新株式発行に対する差止仮処分の決定」がなされ、同時にクーデター側の失敗が決定づけられます。裁判所の決定に「異議申し立て」や「本訴」に持ち込んで対抗しても、約3週間後に予定されている定時株主総会には間に合わず、定時株主総会は既存の議決権割合によって開催され、クーデター側の取締役解任は回避出来ないからです。

 

その後
・取締役4名の解任決議 (定時株主総会 2014.12.28)
・非常勤監査役2名の辞任 ( 2015.01.31 )
・元取締役松崎氏に対する損害賠償請求 ( 2015.12.11 )
・第2位株主の保有割合減少 ( 2015.12.18 会社リリース )
と、クーデターに参加した側は一掃されていきます。

 

今までの説明は私の個人的推測も混じっていますし、またクーデターの原因となった本当の理由も外部からではわかりません。取締役5名のうち4名がクーデター側についた背景には、それなりの理由があったのだと思います。それは何だったのでしょうか?

 

これだけの内紛劇があったのにも関わらず、会社は2015年9月期決算以降、毎期堅調な黒字を計上しています。クーデター側が憂慮した「大型投資の緊急必要性」が本当だったのか、単なる会社支配権を巡る権力闘争だったのかどうかは、皆さんのご想像に委ねます。

 


セカンド・オピニオン㈱代表取締役
企業再生人® 小澤隆
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