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カテゴリ:企業再生

相続税発生は100人のうち8人 – 相続税と中小企業①

富裕層ビジネスの拡充のためか、相続税対策ビジネスの隆盛なのか、様々な相続税対策商品が形を変えてブームになります。最近ではタワーマンション(高層階部分)が流行していました。「借金によるアパート経営」とか、「一時払いの変額年金保険」辺りも有名です。ただその効果は相続税金額のみに焦点が当たっていて、不動産価格変動のリスクやアパート経営のリスク、受取保険金の変動リスクらが曖昧にされ、相続税対策のために逆に数年後、相続資産を失ったりすることもあります。

事業承継について相続税対策を画策していたら、相続予定人(実子)が先に死去してしまい、相続税対策が逆効果で跳ね返ってきたという、笑えない話もありました。

そもそも相続税対策ってどこまで必要なんでしょうか? まず、日本の相続税全体を俯瞰してみましょう。

 

相続税発生は100人のうち8人

平成29年12月に国税庁が公表した「平成28年分の相続税の申告状況について」によると、課税割合(相続税の生ずる年間被相続人数105,880人 ÷ 年間死亡者数1,307,748人)は8.1%でした。死亡者100人のうち、相続税が生じるのは8人です。また年間相続人数は238,550人なので、相続税が生じる相続案件の相続平均人数は2.25人になります。

平成27年(2015)度税改正により、相続税の基礎控除が引き下げられ、課税割合がほぼ倍増の8%になりました。それでも100人に8人という割合は、思いのほか少なくて驚かれた方も多いのではないでしょうか?

 

また、被相続人1人当たりの課税額(≒相続資産額)は1 億4千万円弱、これに対応する相続税は1,764万円でした。

この金額を見てどう思いますか? 相続資産額に対する平均相続税額が13%前後なら、何もトリッキーな相続税対策なんて必要ないと思いませんか? 相続の基礎控除「3,000万+(相続人の人数×600万)」が独り歩きして、相続資産額が3,000万円以上の人は相続税対策が必要のような宣伝文句は馬鹿げているんです。配偶者の基礎控除(正確には『配偶者の税額軽減』です)も考えれば、6億円以上の相続資産でもない限り、下手な相続税対策なんてせず、そのまま納税してしまえば良いのです。2次相続の相続税の心配よりも、アパート経営リスクを残したり、受取保険金の変動リスクを残すことを心配する方が余程賢明です。

 

海外の相続税事情

相続税の存在意義は、『生きている間に稼いだお金に所得税がかかり、死んでからも相続税がかかるのは二重課税であり不公平』という意見と、『相続税が無いと経済的階級の固定化を招く』という意見が真っ向から対立します。

米国では「米国議会合同経済委員会の声明」で、相続税(遺産税)はその弊害の方が大きいと提言し、2010年に一度廃止したほどです(現在は最高税率30%で復活)。

米国議会合同経済委員会の声明 (1998)

1998年、アメリカ議会合同経済委員会「遺産税の経済学」では、遺産税はその利点をはるかに超える納税者、経済への負担と障害を生み、また不公正な制度であると主張した。以下を論点として提出した。

1 遺産税による経済縮小
2 遺産税は貯蓄と投資を低下させ、資源配分を非能率的にする
3 遺産税は最高限界税率80%にいたる事例もあり、非常に懲罰的である
4 中小企業を解体させる主要な原因となっている
5 遺産税は,投資と雇用に向かうべき資源を他の方面に向けさせる
6 遺産税債務により、不必要な土地開発をもたらす
7 遺産税は、あるべき税制の根本原則に反し、複雑で不公平で、非能率的である
8 遺産税は消費を促進する一方、労働、貯蓄、節約をさせなくする傾向をもたらす
9 経験的理論的な研究から、遺産税は不平等を減らすことに効果がなく、現実には消費の不平等をもたらす
10 遺産税のために発生するコストは、1998年には、税収と同等の230億ドルにのぼった。
11 遺産税方式では、相続税の課税根拠を生前所得の精算に求めているが、これは二重課税である。

ウィキペディア「相続税」より抜粋)

 

米国の一時廃止だけでなく、金融立国のスイス・香港・シンガポールをはじめ
・中華人民共和国
・ロシア
・イタリア
・オーストラリア
・ニュージーランド
・スウェーデン
・マレーシア
・タイ
・モナコ
・リヒテンシュタイン
と、多くの国に相続税は現在存在していません

少子高齢化に悩む日本は、最高税率55%に引き上げて相続税範囲拡大・強化の道を選択しました。そして税務当局が相続資産の海外逃避(キャピタルフライト)防止に躍起になっています。これが経済活性化に繋がる選択だったのかどうかは、10数年後に判明するのでしょう。

 

中小企業と相続税

前述した米国議会合同経済委員会の声明 (1998)の中で、

 4 中小企業を解体させる主要な原因となっている

と指摘しています。この論点は、次回のブログ『相続税対策が中小企業をダメにする – 相続税と中小企業②』で説明します。

 

セカンド・オピニオン㈱代表取締役
企業再生人® 小澤隆
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