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カテゴリ:企業再生

制度疲労を起こしている税理士試験

2018年9月12日のブログ「会計士と税理士の違い」で

今の学生さんは会計士・税理士本人達よりも先を見ていて、会計士・税理士ともに受験者数が激減中です。特に税理士試験受験者数の激減は壊滅的様相を示しているではないでしょうか?

と書きました。周囲から質問を受けたので、少し説明します。

 

受験者数減少に歯止めの掛かった会計士試験

会計士試験受験者数は確かに激減したのですが、これにはバカバカしい背景があります。

 

2006年に大手監査法人の大量採用が生じました。背景には「国際会計基準」の導入を迫ったアメリカの圧力もあったともいわれています。いずれにせよ、当時の金融庁・公認会計士業界も、「J-sox」(日本版「内部統制監査制度」)の導入に加え、「公認会計士需要の高まり」を楽観的に見込んで、会計士を大量合格させたのですが、実際には「J-sox」や「国際会計基準」に関する需要はそれほど伸びない大幅な見込み違いとなり、「会計士試験に合格したものの就職先がない試験合格者浪人の大量発生」という「大量合格者」問題が発生したのです。

 

結果、会計士合格者の抑制(2009年以降)→ 会計士受験人気の減少 → 受験者数の減少という状態が続きました。ただこの状況も2014年には落ち着きを見せ、2015年以降は受験者数が微増に転じています。

2017年の合格者は1,231名(平均年齢 26.3歳)でした。2018年7月末現在の会計士の総人数は約36,000人です。(準会員を含む。日本公認会計士協会調べ

 

受験者数減少に歯止めの掛からない税理士試験

 

一方で税理士試験は、2005年をピークに減少の一途を辿っていて、改善の兆しがありません。2018年(第68回)税理士試験が8月7日~9日に実施されましたが、国税庁の公表した「平成30年度(第68回)税理士試験 受験申込者数」によると、受験申込み者数は対前年比93%だったので、2018年の受験者数も前年割れは確実です。

なお、2017年の合格者数(一部科目合格を含む)は6,634名で、年齢別受験者数・合格者数ともに「41歳以上」が最多となっています。税理士の総人数は2018年7月末で約77,000人です。(日本税理士連合会調べ

 

制度疲労の税理士試験

恐ろしいのは、日本税理士連合会による「第6回税理士実態調査報告書(2015年3月)」が示している「税理士の高齢化」です。

・60代~80代の税理士が全体の53.8%
・最も分布の多い年齢層は60代であり、全体の30.1%

 

この調査報告からみれば、現役税理士の平均年齢が60歳を超えているのは明白です。その上、税理士試験受験者も41歳以上が多く、かつ受験者数が激減して「若手にソッポを向かれている」いるという現状は、税理士業界全体が危機的崩壊に向かっていると思います。

 

税理士試験は確かに難関試験なのですが、受験者にソッポを向かれるには理由があります。

① 合格に至るルートに抜け穴(試験免除)が多い
② 暗記主体の勉強を強いられる

という時代錯誤な試験スタイルなのです。

 

税理士総数内訳は試験免除組の方が多い現状

 

・23年以上税務署勤務&指定の研修を受けて税理士資格を得る(国税OB組)。
・大学院修士課程で一部科目免除を得る(院免組)。
・弁護士・会計士の別試験で税理士資格を得る。

といった試験合格組以外の「試験免除組」が、税理士総数の半分以上を占めています。税理士試験は全科目合格するのに8~10年は掛かるとも言われる勉強時間を強いている一方で、試験免除により税理士資格を得ている人がここまで多い現状は、「受験するな!」と言っているようにも思えます。少なくとも私なら、長時間勉強してまで受験したいとは決して考えません。

また、「全科目合格するのに8~10年は掛かる」要因に、試験では理論暗記のようなひたすら文章暗記能力を問う問題が多く出ます。これも時代錯誤で、IT環境が確立していなかった昭和時代ならともかく、これからの時代に必要な能力とは思いません。(会計士試験では「法令基準等」が試験時に配布され、暗記能力よりも理解能力が問われます。)

 

平均年齢が60歳を軽く超える税理士業界では、現役年数が残り少ない世代は大きな変化を望まないのか、縮小する既存の税務マーケットに対して、若手税理士を減らして競争を抑えたいのか理由が分かりませんが、試験制度改革の声は聞かれません。若手が参入してこない業界に未来が無いのは明白です。そもそも税務業務を法定独占業務にしている国は、世界的にみれば少数派なのです。会計士にしろ税理士にしろ、時代や環境に応じて変化していくなら、試験制度も変更していくべきだと思います。日本の税理士業界がどこまで「茹でガエル」状態を続けるのか、会計専門職だった一人としては、大きな関心があります。

 

セカンド・オピニオン㈱代表取締役
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