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カテゴリ:企業再生

相続税対策が中小企業をダメにする – 相続税と中小企業②

前回のブログ『相続税発生は100人のうち8人 – 相続税と中小企業①(2018.08.22)』で書いたとおり、中小企業では、相続開始と同時に、企業が解体してしまうというケースが続出していました。これは日本に限った話でなく、米国でも同様で、このため「米国議会合同経済委員会の声明 (1998)」の中でも、相続税廃止の理由の一つに「中小企業を解体させる主要な原因となっている」と指摘していたのです。

日本のケースでは、相続税の存在に関係して、大きく三つの要因によって中小企業の解体リスクが生じます。

 

要因1 民法の相続規定

民法の相続制度そのものが、企業の単一承継を否定している点です。日本の民法は米国方式の均分相続を取り入れているため、企業オーナーが亡くなると、オーナーの財産が原則として、法定相続分に応じて均等に相続されてしまうのです。

企業経営の観点から言えば、企業オーナーの地位は単一人物に相続させるべきです。株式の均等承継なんて『お家騒動』を招くだけの「愚の骨頂」発想です。他の財産とオーナー地位(株式)を上手く配分出来れば良いのですが、主たる財産が中小企業オーナー権(株式)のみだとすると、そう上手くいきません。

また、現オーナーが均等相続の愚を悟って、「〇〇のみに会社を相続させたい」と考え、その旨の遺言を残しても、「遺留分」という「法定相続人に認められる、最低限の遺産取得分」の民法規定があって、オーナーの死後「遺留分減殺請求」をされれば、生前オーナーの意図は見事に瓦解してしまいます。

 

要因2 相続税は現金納付

中小企業オーナー権、すなわち中小企業株式には転売がかなり困難です。つまり、売買実現性に著しい制限があり、実質的に財産性・換金性がないにもかかわらず、中小企業株式に相続税が課せられることになります。しかもその相続税は原則として現金納付なので、主たる財産が中小企業オーナー権(株式)のみの場合には、その現金を用意するのが最大の問題になります。

中小企業株式では、不動産のような「物納」も制度としては存在していても事実上困難です。納税資金手当てのための無理な資金調達が、その後の経営破綻を招いたり、そもそも事業承継を断念するような選択を強いることになってしまうのです。

 

要因3 無用な相続税対策

株式の相続税評価額は、、純資産金額を基準に評価することになっていますが、一定の要件に該当すると、低く評価できることになっています。

そこで、会社の純資産を減少させることで株の評価を低くする方法として、不必要な退職金や借入金を設定して会社の資産価値を低くする等々の相続税対策が、顧問税理士の指導で広く一般的に行われています。また純資産評価方式の適用を回避するために、株主を増やす、従業員持株会や持株会社の設立するなど、事業承継後の経営リスクを無視した相続税対策が横行しています。

これらの節税策は、「相続税額を低くする」のみに焦点が当たっていて、その後の事業経営リスクに関しては全く考慮されていません。株主の徒な増加策は「お家騒動」勃発を招くだけですし、不必要な借入金の増加は、経済環境が悪化した場合は経営破綻を招きかねません。こんな状態の企業を承継した方は、たまったものではありませんよね。

あくまで私見ですが、日本の中小企業の事業承継を困難にしているのは、相続税の存在よりむしろ、無用な相続税対策ではないかと思います。

 

事業承継税制と納税猶予・免除

経営者の高齢化を迎え、経営者の代替わりがますます加速していく日本、さすがに国も放置できず、前述した要因1~3を考慮した大盤振る舞いの施策を打ちます。それが、事業承継税制です。

事業承継税制は、後継者である受贈者・相続人等が、円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です。

平成30年度税制改正では、この事業承継税制について、これまでの措置に加え、10年間の措置として、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の3分の2まで)の撤廃や、納税猶予割合の引上げ(80%から100%)等がされた特例措置が創設されました。

国税庁HP 「事業承継税制特集」より

 

一定の条件の下で中小企業の相続に関しては、現経営者から後継者への承継(生前贈与)&死亡後承継(相続)の贈与税・相続税は100%猶予し、次の後継者に承継した際には、今まで猶予された贈与税・相続税が免除(チャラ)になって、そのまま次の後継者に引き継がれていく制度です。

この制度は平成21年(2009年)に導入されたのですが、「一定の要件」が厳格で、猶予割合が80%と中途半端で使い勝手が悪く、あまり利用されない制度でした。雇用の維持基準をはじめ、納税猶予が取り消された場合の「適用の打ち切りリスク」が大き過ぎ、まったく魅力がなかったのです。これらの反省から平成30年度税制改正で大幅な見直しが図られ、雇用の維持基準緩和と事業承継後の破綻リスクも組み入れられ、充分魅力的な制度になりました。国の本気度が伝わります。10年間期間限定の特例措置と言わず、是非永久措置にして欲しいです。

 

 

なお、この「事業承継税制」の恩恵を受ける中小企業は、企業価値(株式価値)が億単位の中小企業だと思います。それ以下の中小企業では、そもそも相続税額自体が大きくないので、相続税・贈与税が事業承継の障害にはなりません。評価額が億単位に届かない中小企業では、退職金支給等によって自然体で企業価値調整が可能です。それよりも、事業継続性リスクの方が余程大きな障害だと思います。

事業承継税制は、後継者がその事業を経営している期間中はあくまで納税猶予ですが、今回の税制改正ではM&Aといった経営戦略も封印することなく、充分使い勝手の良い制度になりました。相続税が事業承継の障害になっている場合には、不自然な相続税対策を図るよりも、是非こちらの事業承継税制をまず検討してみてください。「イヤ、相続税ごときキッチリ納税して、猶予制度で将来の経営戦略選択肢を縛られたくないよ」と思う方、是非個別にお話しましょう!

 

セカンド・オピニオン㈱代表取締役
企業再生人® 小澤隆
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