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カテゴリ:企業再生

『日銀保有の国債』と『社債買戻し』

仕事仲間や関係者と雑談になった際、日本の国家財政の話になることがあります。私に質問する方は、どうやら企業再生人 and 企業オーナー社長として何か面白い意見を持っているのではないか?と思うようです。結論から言うそんな面白い意見は持っていません(笑)。

確かに企業再生人という仕事柄、中小企業庁や国税庁を始め、官公庁の統計資料を眺めることが多くあります。私自身はアナリストでも何でも無いので、残念ながら深い考察はありません。あえて言えば、過去の企業再生の失敗経験から、ニュース等で何かが話題になった際に「裏取り」の意味で統計資料を眺めるクセがついてはいます。特に一般的な日本のTVニュースは、報道時間が短時間なためという単純理由だけでなく、視聴者興味を引くように意図的な情報操作が入っているので、誤った結論に導かれやすいと思っています。

 

国家財政の話になると、必ず出てくるのが国債残高や国家財政破綻の話です。この話になると丸1日かけても話しきれない量になってしまうので、今回は質問の多かった中から、企業再生人らしく「日銀が保有する国債」概念と企業会計の「社債買い戻し」の概念の違いに絞って説明します。

 

社債・株式の買い戻しの経済効果

会社が外部から資金調達する場合

① 銀行借入
② 社債の発行
③ 株式の発行

の大きく3パターンがあります。ファクタリング(売掛金等を担保にした借入)は①銀行借入の変形です。社債の公募発行は規模大きい会社でないと事実上不可能ですが、ベンチャー企業向けのCB(転換社債)発行等はよく見られます。

資金調達後、何らかの理由によって資金が潤沢になり、スケジュールを早めて返済をする場合を想定して下さい。銀行借入なら繰上返済で、借入残高が減少して支払利息が節約できます。家のローンの繰上返済が分かりやすい例ですね。

社債や株式の買戻しも経済効果は同じです。

会社がその社債を買戻せば、資産(社債という有価証券)と負債(返済してくてはいけない社債)の両建計上となりますが、支払先が同じ会社なので社債という借入が無くなっている状態と同義です。買入償還という社債返済手続を取れば社債が消滅し、その先に支払う予定だった利息が不必要となって買入償還益が出ます。

株式買戻しの場合は「自己株式」として資本の控除項目という処理がされますが、負債・資本の差があれ、経済効果は同じです。

 

日本国債の保有者

さてここで、日本国債の保有者を見てみましょう。

(財務省 債務管理リポート2018 -国の債務管理と公的債務の現状- より抜粋)

 

日銀とは政府の子会社(51%保有)です。企業会計的発想から見ると、政府と日銀は連結グループとして一体なので、政府の借入である国債を政府子会社である日銀が保有しているというのは、前述した社債買戻しのスキームと同じです。国債という負債を政府子会社日銀が買い戻しています。

アベノミクス&黒田バズーカ(異次元緩和)はスゴイ!いつの間にか日本は400兆円以上の財政再建を為し得ている!!」と思わず拍手喝采したくなるような状況です。実際、このように思う方も多く、類似した質問をする会計関係者も多いのです。

残念ながら、「日銀保有の国債」を「会社の社債買戻し」と同じように考えるのは間違いです。

 

日銀保有の国債の原資は何か?

経済モデルを単純化して、企業会計的発想で説明します。

日銀のB/Sを見れば分かります。この国債購入の原資は、他の資産からの買換えや日銀発行券(円の大量発行)ではありません。「日銀当座預金」という民間銀行からの預け金が原資になっていて、結局、国民の銀行預金に紐付いている(間接的に国民の銀行預金を使っている)のです。政府が国債デフォルトをすると、日銀が日銀当座預金を民間銀行に戻せず、民間銀行の資産が毀損してしまい、最終的には国民の銀行預金が損失を被ることになります。

日銀が政府子会社と言っても、日銀は外部(民間銀行セクター)から資金調達しているので、政府・日銀を連結しても負債は相殺出来ないのです。

(日本銀行HP 第133回事業年度(平成29年度)決算等について  より抜粋)

 

もしこの原資が日銀発行券の増加(円の大量発行)に基づいているなら、「会社の社債買戻し」と同じ経済効果を得られるかもしれません。ただそれは、悪性インフレ(ハイパーインフレ)を生じさせるため禁じ手とされている「中央銀行の国債直接引き受け」と同じ行為なので、デフレ脱却どころでは無くなる可能性があります。

現在の日銀による国債保有は、簡単に纏めると『中長期金利の低下を促し、間接的に為替を円安化させて、民間需要を刺激させデフレ脱却と景気浮揚を狙おう』という心理的効果狙いです。

 

国債についての考察

・教科書的に中央銀行がマネタリーベースでマネーサプライを本当に調節できるか?
・国債の一部永久債化(英金融サービス機構元長官のアデア・ターナー氏が提案)はどうなんだ?
・1930年代の高橋是清財政(日銀引受による国債発行)は本当にハイパーインフレを起こしたのか?
・中央銀行の破綻ってあり得るのか?

等々、国債に関する考察は、経済学者の間でも様々な意見が交錯しています。これらの話題になると、冒頭に書いたとおり議論が尽きません。

 

ただ、一時的にどの様なトリッキーな手法を取ったとしても、最終的には企業再生と同様にP/L改善(財政収支改善)かB/S調整(通貨切り下げ、ハイパーインフレによる資産・負債の圧縮)が必要になると思っています。

 

セカンド・オピニオン㈱代表取締役
企業再生人® 小澤隆
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