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カテゴリ:企業再生

高額な役員報酬

日産のゴーン容疑者逮捕劇ですっかり有名になった「高額な役員報酬」です。昨年末に「東京地検特捜部が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑でゴーン容疑者と、代表取締役のグレゴリー・ケリー容疑者を逮捕」という電撃ニュースが走りました。

多くの方が誤解していますが、「高額な役員報酬」のために逮捕されたのではなく、「報酬の一部を除いた過少記載をした」という有価証券虚偽記載罪容疑です。その後の捜査当局リーク情報に基づく新聞報道によると、その過少部分は実際にまだ受け取ってはおらず、「将来そういう受取を約した覚書を結んだ」程度で、株主総会の決議も経ていない曖昧な未確定な状態です。

本命の「特別背任(2018年12月21日逮捕)」容疑までの捜査固めのための別件逮捕ですが、その「特別背任」容疑ですら、新聞報道では実際に日産側に与えた明確な損失額がゼロと、「???」という疑惑です。捜査当局の立証の中で、さらに新たな疑惑・証拠が出てくるとは予想するのですが、逮捕劇は日産のお家騒動(権力闘争)に利用されていて、そんな中で捜査当局側の情報を一方的に流す報道姿勢っておかしいと思います。

 

役員報酬は誰が決めるのか?

TVニュースの中では

「リストラされた自分からすると許せない」
「下請けにコストカットを迫る一方で自分だけいい思いをして・・・」

といった扇情的なインタビューが意図的に強調されていました。根底にあるのは「高額な役員報酬は許せない」という情緒的感情です。相変わらずTVニュースは客観性を欠いていて、視聴率欲しさの世論誘導が入っています。

役員報酬は株主総会で承認されます。「高額な役員報酬」が許せないなら意思決定者の株主に文句を言うべきなのです。「株主総会なんて形式的で、実際はゴーン氏独裁政権で何でも決められた」という意見もあるでしょう。でもそれは日産内での株主・取締役との内部関係の話で、当事者の株主が文句を言っていない以上、外部が文句を言う筋合いではないのです。

 

例えば、ある繁盛している飲食店の店長が、お店オーナー承認のもと、他のお店スタッフより高額な給与を貰っていたとしましょう。お店スタッフは「あなたの給与高過ぎ!」と店長に文句を言うのでしょうか?言うとしたら、その給与を決めているお店オーナーに対してか、「自分の給与も上げろ!」という文句ではないでしょうか? さらに外部の材料仕入先から、「オタクの店長の給与は高過ぎ!そんな給与払うくらいなら、納入単価を上げろ!」と文句を言われる筋合いの話でしょうか?

 

そもそも日本では、取締役報酬と従業員給与を同一視する混乱傾向があります。取締役は従業員とは明確に相違し、労働法で守られていない存在です。任期が無期限ではありませんし、その地位は委任契約であって雇用契約ではありません。その委任元が株主総会です。かたや会社への貢献度が報酬決定基準、かたや労働の提供が給与決定基準なのです。

 

ゴーン氏が日産に登場したのは1999年。長期にわたる販売不振で業績悪化が続き、有利子負債が2兆円と、倒産寸前だった日産がルノーと資本提携し、ルノーの上席副社長だったゴーン氏が、日産の経営再建を主導するため、最高執行責任者(COO)として送り込まれます。当時のゴーン氏は業績が悪化していたルノーで工場閉鎖や調達先の絞り込みなどを進めて業績を急回復させたことから、業界で「コストカッター」との異名で呼ばれるほどでした。その再建手法には批判もありますが、日産の業績は倒産寸前から順調に回復し、2018年3月期の最終損益は+7,468億円。役員報酬が年間10億円だろうと年間20億円だろうと、大勢に影響はありません。

 

米国での役員報酬ランキング

少し古い記事ですが、東洋経済新報社が「企業トップの年間現金報酬額が多い300社ランキング」を公表しています。

『米国会社四季報』掲載銘柄のうち、企業トップが直近決算期の1年間にどれぐらいの現金報酬を手にしたのかをランキングしてみた。ランキング1位のトップの報酬額はなんと56億円だ。日本では、日産自動車のカルロス・ゴーン会長兼社長の年収などが話題になるが、大企業のトップでさえ、ため息が出る額だ。

(略)

さて、日本企業はというと、このあたりから説明を始めるのが現実的だ。退職慰労金の支払いを除いた場合、日本の上場企業で断トツなのは、前出の日産自動車会長兼社長のカルロス・ゴーン氏だ。しかし、同氏でさえ年間報酬額は9億9500万円程度。今回のランキングでいうと、30位台半ばの位置だ。日本が誇る世界一の自動車メーカーのトヨタ自動車でも、豊田章男社長にいたっては2億3000万円で、今回のトップ300企業ランキングで見ると、ランキング対象外ということになる。

同社(トヨタ自動車)は前2014年3月期に1兆8000億円を超える純利益をたたき出している。その成功報酬が2億程度では、米国経営者にしてみればお話になりません、ということになるのだろうか。

ケタ違い!これが米国CEO報酬トップ300だ
(東洋経済オンライン 2014年12月5日配信)より抜粋・引用

 

「高額な役員報酬」が許せない?

この情緒的感情論を端的に示すルールが日本の税法にあります。取締役報酬は会社内部(株主総会)で自由に決定できるのですが、その法精神を否定する「過大な役員報酬の損金不算入」制度です(法人税法34②、法令70)。

 

税法では役員給与は利益処分だ!という考え方が根底にあって、会社法等が改正されてもその法解釈に変更はありません。いかに日本の社会が嫉妬深い「出る杭は打ちまくれ!」なのかが分かります。

この過大な(不相当に高額な部分の金額)の判断基準が大変曖昧で、類似業種の平均値との比較を求めているのですが、そんな他社・未公開企業の個別役員報酬金額なんて、通常は外部からでは分かりません。まして平均以上の報酬を得るのが「不相当に高額」と見做され、常に類似業種会社の役員報酬との比較を求めること自体、馬鹿げた過干渉&監視体制だと思います。

 

課税の公平性を図るなら、『「不相当に高額」を情報入手不可能な曖昧なものにせず、「コレだ!」という金額基準を明確に示してしまえば良い』と思うのですが、わざと曖昧にして明示せず、運用ルールが適宜変わるというスタイルが、なんとも前近代的だと思います。

 

セカンド・オピニオン㈱代表取締役
企業再生人® 小澤隆
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