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カテゴリ:企業再生

株式交換によるM&A(企業買収)の実践的メリット

企業買収スキームに「企業買収による支払対価を、現金ではなく自己株式」で実施する「株式交換」があります。一般的な企業買収スキームは現金買収ですが、なぜこのような「株式交換」も用いる必要があるのでしょうか?

買収元が上場企業であれば、会社売却側は対価として「上場企業株式」を貰うので現金化が可能ですが、買収元が未公開企業であれば、その未公開企業の株式を貰っても現金化が容易ではありません(事実上不可能)。また仮に上場企業株式であっても上場企業の規模が小さければ、株式市場での大量売却は株価下落を招き、満足な現金化すら出来ない可能性もあります。

 

株式交換とは

株式交換とは、2つの既存の会社を一度に完全親子会社の関係にする組織再編に係る手続です。

会社法 第767条(株式交換契約の締結)

株式会社は、株式交換をすることができる。この場合においては、当該株式会社の発行済株式の全部を取得する会社(株式会社又は合同会社に限る。以下この編において「株式交換完全親会社」という。)との間で、株式交換契約を締結しなければならない。

 

株式交換のメリット(一般論)

① 買収側に買収対価で支払う現金が必要ではない。
② 少数株主の反対があっても株主総会の特別決議(2/3以上)で株式交換が可能
③ 100%子会社として別法人格を継続でき、債権者保護手続きも原則必要ない。

の3点が株主交換のメリットとして一般的に言われます。補足すると、支払対価は買収側の株式のほか、相手側が同意すれば社債・他の会社の株式等、有価のものであれば何でもOKです。

また、通常の企業買収では100%子会社化しようとすると、全ての株主との個別交渉が必要になりますが、株式交換では株主総会の特別決議(2/3以上)により、反対する少数株主を「買取請求権」により、その反対意思を無効化できます(会社法785条)。株式買取の対価を現金にすれば、株式交換後の親会社・子会社グループから排除する結果になるので、「少数株主の排除(スクイーズアウト)」が成立します。

さて、ここまでは株式交換説明でよく出てくる一般的なメリットですが、企業再生人の視点を加えた実践的なメリットを見てみましょう。

 

株式交換でのメリット(実践編)

① 株式交換は上場企業にとって、買収意思決定がしやすい
買収資金に「現金」が必要ないという点は、手元資金がそれほどなくても、銀行等からの追加借入や増資手続等のファイナンス(資金調達)の必要がないことを意味します。特に簡易株式交換(株式交換の対価が完全親会社の純資産の20%以下の場合:会社法796条3項)であれば株主総会決議が必要ないので、取締役会決議のみで進み、とてもお手軽です。

 

② 株式交換は上場企業にとって、第三者割当増資による資金調達と同じである。
株式交換の経済効果は、買収先会社の株主を割当先とした、現物出資による第三者割当増資と同じです。既存株主にとっては株式持分の比率減少(株式の希薄化)が生じますが、交換比率が合理的なら理論的には既存株主の株式価値に変動はないハズです。
上場企業側が「現在の株価は割高評価されているな」と考えていたり、「現在のわが社の経営成績では株式市場からの資金調達は困難だな」と考えている場合は、とてもお手軽な資金調達手段になります。

 

③ 会社売却後も夢を見ることが出来る
買収される側の株主は100%子会社化することで、売却した会社の経営権を失いますが、親会社の株主になります。会社創業者の場合、「会社売却で、もうサッサと引退したい」と思っていれば上場株式を売却して現金化するでしょう。逆に「まだバリバリ現役で居たい」と思う場合は、上場企業の主要株主となって「上場企業という大きな器で、さらに自分の能力を生かし、株価上昇によって経済利益も得られる」という夢を見ることが可能です。またこのストーリーで、企業買収に応じるべく口説くことが出来ます。

 

④ 現金買収より買収価額を高めに設定しやすい
現金買収では買い手側も買収資金を用意しないといけないので、買収価額の評価は慎重になります。一方で株式交換では、買収側が①②のように比較的にお手軽である点、売却側も現金化リスクを負うので、現金買収価額にリスクプレミアムを上乗せした買収価額を要求する点が考慮され、買収価額は高めに設定されることが多くなります。

 

といったメリットがあります。

 

勿論メリットとデメリットは裏腹で、「交換比率」が不合理であると過度な希薄化が生じたり、買収後の業績が芳しくなかった場合は株価が下がって買収対価が目減りしてしまうなどのケースもあります。

 

このように単純な「現金買収」とは違って、買い手側・売り手側の双方の思惑が絡まって、株式交換による買収が成立するのです。

 

セカンド・オピニオン㈱代表取締役
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