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カテゴリ:企業再生

「短期売買利益の提供制度」と地域新聞社株式売却益

短期売買利益の提供制度」という制度をご存知ですか?

上場株式特有の制度で、インサイダー取引を間接的に防止するために、6ヶ月以内の短期売買取引により、上場会社等の役員又は主要株主が利益を得た場合には、上場会社は、その利益を上場会社へ提供すべきことを請求することができる制度です。

上場会社の主要株主になると、6ヶ月以内の売買取引で得た株式売却益はその上場企業に提供(返還)を要求され、それに応じないといけないのです。

 

主要株主になったら6か月以内はキャピタルゲイン狙いの売買はしてはイケナイというルールです。この「短期売買利益の提供制度」の他にも

・「役員又は主要株主の売買報告書」の提出義務(金融商品取引法第163条)
・保有有価証券を超えた空売りの禁止(金融商品取引法第165条)

という上場企業の主要株主特有のルールがあります。

金融商品取引法

第百六十四条 上場会社等の役員又は主要株主がその職務又は地位により取得した秘密を不当に利用することを防止するため、その者が当該上場会社等の特定有価証券等について、自己の計算においてそれに係る買付け等をした後六月以内に売付け等をし、又は売付け等をした後六月以内に買付け等をして利益を得た場合においては、当該上場会社等は、その利益を上場会社等に提供すべきことを請求することができる

2 当該上場会社等の株主が上場会社等に対し前項の規定による請求を行うべき旨を要求した日の後六十日以内に上場会社等が同項の規定による請求を行わない場合においては、当該株主は、上場会社等に代位して、その請求を行うことができる

 

「短期売買利益の提供制度」の実際例

最近ではJALCO ホールディングス株式会社(JASDAQ6625)の個人株主A氏が、保有株式のクロス取引で計上した売却益が該当したケースがあります。

当社は、平成 26年6月上旬に、A氏より、平成 25 年 12 月 20 日、及び同年 12 月 25 日に行った当社株式の取引に関して、関東財務局から「金融商品取引法第 164 条第1項に規定される特定有価証券の短期 売買利益 61,334,211 円を得ていると判断される」という内容の利益関係書類を受領した旨の連絡を受け ました。

当社は、当該取引が、当社が平成 24 年2月 10 日及び平成 25 年2月 21 日に第三者割当によりA氏に割り当てた株式の売買であることから、当該取引が行われた時点で、A氏より取引を行った旨の報告を 受けておりましたが、当該取引は、A氏が保有有価証券の評価替えを目的として、当日売却した株式を翌営業日に同数量を同価格にて買い戻すという内容のものであり、A氏は経済的には売買利益を得ているものではありませんでした

もっとも、金融商品取引法第 164 条第1項に基づく計算では短期売買利益が生じていることになり、また同条項によりますと、「上場会社等の役員又は主要株主が、当該上場会社等の有価証券の6ヶ月以内の 短期売買により利益を得た場合には、当該上場会社等は、短期売買により得た利益を提供するよう当該役員等に請求することができる。」となっております。

そのため、当社が外部の法律家に当該利益返還請求 について意見を求めたところ、当該取引によってA氏が経済的には売買利益を取得したものではないという点を勘案しても、当社が営利企業である以上、金融商品取引法第 164 条第 1 項に基づく短期売買利益 が発生しており、その請求が法令上可能である限り、利益返還請求を行うべきではない旨の意見形成は困 難であるとのことでした。

このため、当社は、A氏に対して利益返還請求を行うこととし、A氏が現実に売買利益を取得したものではないという点を踏まえて、慎重にA氏と協議を行いました。その結果、A氏との間で合意に至ったため、金融商品取引法第 164 条第1項の規定により算定された利益 61,334,211 円を提供する旨の覚書をA氏との間で締結いたしました。

 

JALCO ホールディングス株式会社 2015年3月13日付けIR
「当社株式短期売買利益の返還請求に伴う特別利益の計上に関するお知らせ」より抜粋

個人株主A氏は、実質的に経済的利益を得ていないのに「短期売買利益の提供制度」に抵触したことに驚いたことでしょう。結果、個人株主A氏は売却益61百万円の返還に応じ、JALCO ホールディングス株式会社は同額の特別利益を計上しています。

 

中広(東証一部2139)の地域新聞社(JASDAQ 2164)株式売却益

2018年8月、経営再建途上の無料情報紙発行の地域新聞社(JASDAQ 2164)の20%強を取得し、ほぼ同業種の中広(東証一部2139)が創業者株主に次ぐ第2位株主に躍り出ました。

 

長らく経営不振に陥っていた地域新聞社をどの様に再生させるのだろう?」と注視していたのですが、数か月後、予想外の展開になります。地域新聞社の株価は8倍以上に急騰し、業績の下方修正を公表した中広は、「同社株式を保有し協力関係を構築することで、当社の自社フリーメディアの拡大・向上のみならず、広告業に係るネットビジネス等新たな領域を含むビジネス展開を加速させることを目的」という政策的保有を翻し株式売却益狙いの売却方針へと舵を切ったのです。

 

 

売却するかどうかは中広の経営判断ですし、株式売却自体は合法です。ただこの株式売却益は、私の理解では「短期売買利益の提供制度」に該当するように見え、どうなのだろう?と不思議でした。

中広側からも地域新聞社側からも「短期売買利益の提供制度」への言及はなく、中広は当株式売却益460百万円をそのまま利益計上した決算短信を公表しています。私の理解が間違っていて、当該取引は「短期売買利益の提供制度」に該当しないのかもしれません。

 

中広及び地域新聞社への財務局からの通知は未着かもしれませんが、有価証券報告書で中広側・地域新聞社側の監査法人がどのように判断するのかを待ちたいと思います。当該取引は「短期売買利益の提供制度」に該当し、この株式売却益は地域新聞社に提供されるものなのかどうか?、されないとするなら何が理由なのか?を学びたいです。

 

セカンド・オピニオン㈱代表取締役
企業再生人® 小澤隆
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