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カテゴリ:企業再生

羨望の官民ファンド

官民(かんみん)ファンドとは、国の政策に基づき日本政府と民間で出資する日本の政府系ファンドです。民間ではリスクの取り切れない分野に、経済視点だけでなく政策視点を考慮した投資を実施します。

農水ファンド 20年度末に投資停止 農水省が正式発表

江藤拓農相は20日の閣議後記者会見で、官民ファンド、農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)の新規投資業務を2020年度末で終了すると正式に発表した。21年度からは回収業務に専念する。同機構は投資活動が計画通り進まず、19年3月末の時点で92億円の累積損失が積み上がっていた。江藤農相は「解散は可能な限り速やかに行う」とした。

(略)

A-FIVEは農家が食品製造に乗り出すなど「6次産業化」に取り組む事業者などに出資するため13年に設立した。ただ、想定ほど投資案件が積み上がらず、経営不振に陥る投資先もあった。財務省も農水省に対し、抜本的な事業の見直しを求めていた。

日本経済新聞 2019/12/20配信より抜粋・引用

 

官民ファンド 農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)

農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)は平成25年(2013年)2月に出資金319億円(政府出資300億円、民間出資19億円)でスタートしました。農林漁業を成長産業となるようにするため、民間の資金・ノウハウを十分に生かし、官民が連携した新たな資金循環等による農林漁業の成長産業化を目指した官民ファンドです。

この民間出資には、金額は319億円のうち19億円と比率は小さいものの、カゴメ株式会社、農林中央金庫、ハウス食品グループ本社株式会社、 味の素株式会社、キッコーマン株式会社、キユーピー株式会社、 日清製粉株式会社、株式会社商工組合中央金庫、 野村ホールディングス株式会社、明治安田生命保険相互会社、 トヨタ自動車株式会社と、日本を代表する大手企業が応じています。
(農林水産省『農林漁業成長産業化ファンドの概要 令和2年1月』より)

 

一方、政府出資とありますが、A-FIVEの財源は、その多くは財政投融資特別会計(投資勘定)からの出資です。一般会計のような税金直接投入ではないですが、国有財産の運用(NTT株・JT株の配当金や日本政策金融公庫の国庫納付金etc)財源からの流用なので、広い意味で、税金が財源と理解して間違いありません。

またA-FIVEの特徴として、対象企業への直接投資だけでなく、地方銀行を中心としたサブファンドに出資し、地方銀行等の出資も呼び込んでいます(42サブファンド設定 総額634.8億円 、うちA-FIVE分317.4億円)。

 

ところが、平成30年(2018年)4月に会計検査院により公表された『官民ファンドにおける業務運営の状況について』で、かなりのダメ出しをされていて、A-FIVEは時限立法20年(2033年終了予定)の期間満了の半分にも満たない2020年度末で新規投資業務は終了、事実上の廃止になってしまいました。

 

A-FIVE の投資実績と投資成果

A-FIVE の投資実績は、サブファンドも含めて合計168.8億円 (A-FIVE出資分126.3億円)です。投資枠設定が600億円を超えているに対してのこの投資実績を見ると、如何に「第6次産業化」を応援すべき企業を探すのに苦労したかが分かります。

また投資による成果は、2019年3月末の時点で92億円の累積損失と指摘されていますが、令和2年(2020年)3月末時点の累積損失が115億円に膨らむ見込みと報道されていて、

「169憶円投資して、投資額7割(▲68%)の損失か!」

と驚異的なダメダメ投資成果です。いくら民間ではリスクの取りづらい投資対象と言っても、この投資成果では「何を基準に投資対象を選別したんだ?」と思わずにはいられません。

 

官民ファンドのExit戦略

国による企業支援といえば、補助金や政府保証融資が従来の方法でした。ここに、

〇これまでの補助金や融資に加え、新たな政策ツールとして「出資」を追加。
〇ファンドからの「出資」により、①自由度の高い資金供給、②財務体質の強化(民間資金の呼び水)を通じて、6次産業化の取組や 事業再編・事業参入を後押し。

を目指して、「官民ファンド出資」が支援手法として加わりました。

 

しかし補助金と違って出資では、どこかで投下資本の回収(Exit戦略)が必要になります。官民ファンドの全てが失敗している訳ではありません。ただA-FIVEでは、その投資先一覧と投資額(1件あたりが1億円未満の小口投資が多い)を見る限り、どのようなExit戦略を想定していたかが私にはよく分かりません。

出資枠が優雅に与えられて、大損失をしても誰も責任を取らなくてもよい

そんなファンドは民間ではあり得ません。投資資金調達に奔走する訳でもなく、投資対象のサポートに汗をかくわけでもなく、ファンド運営者は報酬と退職金を得て優雅に消滅となり責任がウヤムヤになるという、ファンド運営者視点では羨望の官民ファンドでした。

 

 

セカンド・オピニオン㈱代表取締役
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