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カテゴリ:企業再生

従業員買収は誰のため?

MBO(経営陣による自社買収)は有名です。これとは違う買収形態で、自分の会社を経営陣ではなく従業員が買い取ってしまうEBOという買収形態があります。

エンプロイー・バイアウト(Employee Buy-Out、従業員買収、略称:EBO)とは、会社の従業員がその会社の事業を買収したり経営権を取得したりする行為のこと。中小企業など中心に古くから盛んに行われている。

ウィキペディア「エンプロイー・バイアウト」より抜粋・引用

例えば中小企業に後継者問題が起こった際に、古参の従業員に手を挙げてもらって、オーナー社長からその会社を継承して貰うケースが分かりやすいケースでしょうか。

 

日本では上場企業のEBO事例はまだありませんでしたが、2019年12月に、日本では初めての上場企業EBO成立か?というニュースが出ました。

不動産会社ユニゾホールディングスは従業員による買収(エンプロイー・バイアウト=EBO)により非公開化すると発表した。従業員と米投資ファンド、ローンスターが共同で設立した新会社がユニゾにTOB(株式公開買い付け)を実施し、全株の取得を目指す。8月に別の米投資ファンドによる買収をいったん受け入れたものの、その後対立し膠着状態にあった。EBOが実現した場合、ユニゾの経営陣は全員辞任する。

日本経済新聞(電子版)2019年12月22日配信より抜粋・引用

 

当初はEBO成立が確実視されていたのですが、別ファンド2社がEBO側より更に高い値段のTOBを公表し、EBO側がそれをさらに上回る価格に引き上げて… と、まだまだ買収合戦が続きそうな気配になり、EBOが成立するかどうかは現時点で不明です

 

ユニゾHD(東証1部 3525)の敵対的買収vs白馬の騎士(ホワイトナイト)

ユニゾHD の「EBOによる非公開株式会社」案は、特殊な事情から生まれました。

 

ユニゾHDは、元々は旧日本興業銀行系の中核企業でした。現在は、みずほフィナンシャルグループ(FG)系の不動産会社となっており、現社長の小崎哲資社長もみずほFG出身です。小崎哲資氏は、みずほFGが不良債権処理で窮地に立った際に「二重持株会社方式」「取引先企業3500社を引受先とする1兆円増資のスキーム」によって公的資金の返済・自己資本比率の改善という奇策を生み出して窮地を救った立役者でもあります。

そんな“みずほFG”系のユニゾHDですが、小崎社長就任後、ユニゾHDは4回の公募増資を実施し、株式の希薄化が起こります。株主名簿に連なる“みずほ系”株主の持ち分比率は年を追うごとに低下していて、株主比率の分散化により経営陣による独自路線が強化されてきました。

 

そんな矢先の2019年7月、旅行大手HIS(東証1部 9603)がユニゾHDへの敵対的TOB(1株3,100円)を公表します。「変なホテル」をはじめホテル運営事業に注力を入れだしたHISにとって、全国に24のホテルを有し運営ノウハウのあるユニゾHDは格好のTOBターゲットでした。提示したTOB株価3,100円は、当時の株価(2019年7月9日終値1,990円)に50%以上のプレミアムを上乗せした価格です。

 

HISの敵対的TOBに対し、ユニゾHD経営陣は反対意見を表明(2019年8月)。ユニゾHD側はHISへの対抗馬としてソフトバンクグループ傘下の米国フォートレス・インベストメント・グループ(以下「フォートレス」)をホワイトナイトに選別し、フォートレスによってHISの提案価格を上回る1株4,000円で友好的TOB実施してもらいます。

こうして、HISの敵対的TOBは不成立に終わり、ホワイトナイトであるフォートレスによる友好的TOBが成立する… ハズでした。

 

 

ユニゾHDの裏切りと経営陣の保身策

HISの敵対的TOBが不成立に終わった後の2019年9月、自らが呼び込んだホワイトナイトであるフォートレスに対し、ユニゾHDは態度を豹変させます。フォートレスによるTOBに対し、賛成から意見留保に変更(のちに「反対」になる)とし、無茶苦茶な条件を後出しで追加するのです。

① 別のファンドから提案があったので、買収価格をその価格まで上げろ
② 買収したとしても、実質的に会社の財産や経営には手を出すな

です。

本買収提案が当社の企業価値の維持・向上に資するものであると判断するためには、当社の従業員の雇用が確保された上で、従業員にとって働きがいのある企業であり続けることを確保できる「仕組み」が採用されている必要があると考えております。

具体的には、単に、本買収提案の時点における労働条件が維持されるだけではなく、従業員による当社の企業価値の向上に対する貢献を踏まえた労働条件の持続的な改善を実現することができる必要があり、買収提案者による当社の解体や企業利益の過度な収奪を防止するための「仕組み」が採用されているかどうかが、当社の企業価値の維持・向上に資するものであるかどうかを判断するうえで重要な要素となると考えております。

当社への買収提案に対する対応の基本方針について」(ユニゾHD 2019.9.27公表)より抜粋・引用

 

こんな条件を後から出されては、要請されてホワイトナイトとして友好的TOBを実施した「フォートレス」側はたまりません。要は、ユニゾHD経営陣は、HISによる敵対的TOBを回避出来た後で、難癖をつけて「ちゃぶ台返し」に出たのです。まさしく、ユニゾHD経営陣による裏切り行為です。

また、「従業員にとって働きがいのある企業であり続けること」と従業員のためというお題目を掲げていますが、これらの経緯はユニゾHD経営陣の保身策であることは明白です。

 

更に2019年10月、米国投資ファンドのブラックストーンがTOB合戦に参戦を表明。1株5,000円という今までの中で最高値によるTOBですが、これに対してもユニゾHDはフォートレスで実施したなりふり構わない対抗策で抵抗します。ブラックストーンは「ユニゾHDの要求は投資ファンドが企業価値を高めて株式を売却し、利益を得ることを邪魔する異例の要請であり、世界中の投資ファンドで受け入れられないだろう」と非難します。

こうして、”従業員のため”というお題目によるユニゾHD経営陣の保身策 vs ユニゾHDの不動産含み益狙いの投資ファンドが衝突し、ユニゾHDへのTOB合戦は混迷を深めていきました。

 

ユニゾHDのEBOは誰のため?

前述したEBOは、ユニゾHDが投資ファンドからのTOBを排除するために考えられた苦肉の策です。とはいえ、その買収資金は別の米投資ファンドのローン・スターから短期借入により調達していて、仮にEBOが成立しても、その返済原資を捻出する過程で会社・従業員が受ける影響は計り知れないものとなるでしょう。このEBOですら、他の投資ファンドの再敵対的TOB提案によって成立が不透明です。

 

またEBOによりユニゾHD現経営陣は退陣するとありますが、今までの経緯を考えると、これを額面通りには取れません。このような奇策・ハイレバレッジのリスキーなEBOスキームを、残った従業員だけで継続することが可能なのでしょうか?

 

HISの敵対的TOBから端を発したユニゾHDのTOB合戦ですが、振り返ってみると、ユニゾHD従業員にとってはHIS提案が最善だったように私には見えます。これに反発したユニゾHD経営陣の対TOB対策ですが、経営陣の保身が際立ってしまい、逆に今後の会社・従業員を圧迫してしまっているように感じています。

 

 

企業再生人® 小澤隆
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