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カテゴリ:企業再生

賃貸契約の解除(倒産解除特約)と民事再生法

先日、弊社オフィスの賃貸契約更新があり、いつものようにSOHOオフィスで更新手続の書面を記入していました。そしてトイレに行くと、なんとトイレの水タンクからの「水漏れ」が発覚。

時刻は夜8時を超えていて、「このまま『水漏れ』を明日まで放置して、万が一、階下まで水漏れが達したら賃貸契約を打ち切られるかな?」と思いました(笑)。あまりにタイムリーな水漏れ発生です。

今は24時間対応の水漏れトラブル対応専門会社があるので、明日まで放置するようなことはせず、スグに連絡して対応してもらいました。「ちょっと高めかな?」というお値段でしたが、夜に2時間以内に対応して頂いて事なきを得て、コチラとしては大満足でした。

 

賃貸契約の解除事由

水漏れトラブル対応専門会社が作業している間、改めて賃貸契約書を眺めていました。企業再生の過程で費用削減、特に固定費削減を図る際は、費用項目の中で金額が大きい「家賃」は常に削減ターゲット費目になります。

一般的に家賃の契約途中での値下げ交渉は殆ど不可能で、契約更新時に多少の家賃値下げ交渉は可能かもしれませんが、基本的には別の場所への移転により家賃を下げるしか家賃削減の選択肢はありません。移転・引っ越しはそれだけでも多額の一時資金が必要で、経営破綻寸前ではそのような資金が用意できず、ジリ貧になる一方です。

家賃削減を図るのであれば、引っ越しすら出来なくなる程経営体力をすり減らさないうちに実行するのが鉄則です。

 

(契約の解除)

第11条 甲は、乙が次に掲げる義務に違反した場合において、甲が相当の期間を定めて当該義務の履行を催告した にもかかわらず、その期間内に当該義務が履行されないときは本契約を解除することができる。
乙が賃料又は共益費の支払いを2ヶ月以上怠ったとき。
二 乙の故意又は過失により必要となった修繕に要する費用の負担を怠ったとき。

2 甲は、乙が次に掲げる義務に違反した場合において、当該義務違反により本契約を継続することが困難である と認められるに至ったときは、本契約を解除することができる。
一 本物件を居住の用以外に使用したとき。
二 第8条(禁止又は制限される行為)のいずれかの規定に違反したとき。
三 入居時に、乙又は連帯保証人について告げた事実に重大な虚偽があったことが判明したとき。
四 その他乙が本契約の各条項に違反したとき。

3 甲又は乙の一方について、次のいずれかに該当した場合には、その相手方は、何らの催告も要せずして、本契 約を解除することができる。
一 第7条(反社会的勢力ではないことの確約)の確約に反する事実が判明したとき。
二 契約締結後に自ら又は役員が反社会的勢力に該当したとき。

4 甲は、乙が第8条第3項第七号から第九号に掲げる行為を行った場合は、何らの催告も要せずして、本契約を解除することができる。

全国不動産管理業協会による「住宅賃貸借契約書」ひな型 より抜粋

家賃の滞納や反社会勢力との繋がりは、即契約解除事由に該当します。弊社の賃貸契約書もほぼ同じ解除事由が並んでいます。トイレ水漏れは解除事由には該当しませんが、それを放置して周囲の居住者に迷惑を掛けたら、ビミョーなところでしょうか?

 

このひな形には記載されていませんが、賃借人が破産・民事再生・会社更生等の手続きを申し立てた場合には契約解除となる特約(倒産解除特約)が記載されている賃貸契約が殆どだと思います。弊社の賃貸契約でもこの特約が記載されています。

 

賃貸契約の解除特約(倒産解除特約)と民事再生

民事再生法 第49条 (双務契約)
1.  双務契約について再生債務者及びその相手方が再生手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときは、再生債務者等は、契約の解除をし、又は再生債務者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができる

2.  前項の場合には、相手方は、再生債務者等に対し、相当の期間を定め、その期間内に契約の解除をするか又は債務の履行を請求するかを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、再生債務者等がその期間内に確答をしないときは、同項の規定による解除権を放棄したものとみなす。

3.  前二項の規定は、労働協約には、適用しない。

4.  第一項の規定により再生債務者の債務の履行をする場合において、相手方が有する請求権は、共益債権とする

5.  破産法第54条の規定は、第一項の規定による契約の解除があった場合について準用する。この場合において、同条第一項 中「破産債権者」とあるのは「再生債権者」と、同条第二項 中「破産者」とあるのは「再生債務者」と、「破産財団」とあるのは「再生債務者財産」と、「財団債権者」とあるのは「共益債権者」と読み替えるものとする。

結論から言うと、倒産解除特約が記載されていても、民事再生法の申し立てを解除事由として賃貸人(家主)側から契約解除は出来ません

民事再生法では再生が可能な限り進むように「賃借人(再生債務者=申し立てた会社)が賃貸借契約を解除するか、そのまま継続するかどちらかを選択できる(49条1項)」ことを定めていて、倒産解除特約はこの趣旨に反するからです。

 

賃貸人(家主)側から見ると、民事再生法開始決定前の家賃(滞納があれば滞納家賃)は「再生債権」となって、債権カットの対象になります。民事再生法開始決定後の家賃は「共益債権」となり、債権カットされることなく通常通り100%家賃支払いがされていきます(49条4項)。

少し法律的な話になりますが、賃貸借契約は民事再生法50条にいう「継続的供給契約」に該当せず、民事再生法50条を理由に賃借人側は契約解除を拒否できません。

 

でも、世の中そんなに甘くない

この話をすると、

「そうか、民事再生法によって滞納家賃が再生債権としてカットされ、かつ賃貸契約が強制的に解除されないなら万々歳じゃないか!」

と安直に考える方も居ますが、現実はそんなに甘くありません。

 

民事再生法を申し立てなければならない資金困難な状況では、ほぼ100%の確率で家賃滞納状況が発生しています。民事再生法を申し立てようが何をしようが、賃貸人(家主側)は滞納家賃〇ヶ月分という債務不履行を解除事由に契約解除が出来るのです。上述した「倒産解除特約が無効」な場合とは、民事再生法申し立て&開始時に、解除事由となるような滞納家賃が無い場合です。

極めて当たり前の話ですが、オフィスであれ店舗であれ事業運営に必須な賃貸契約であれば、滞納家賃が発生して賃貸契約が強制解除されないように心掛けないとイケナイのです。

 

セカンド・オピニオン㈱代表取締役
企業再生人® 小澤隆
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