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カテゴリ:企業再生

人手不足倒産は悲しいニュースではありません

2020年1月9日に、帝国データバンクは「『人手不足倒産』の動向調査(2019年1~12月)」を公表しています。帝国データバンクは毎年「『人手不足倒産』の動向調査」を公表していて、その2019年版になります。新型コロナウィルスの影響前の動向調査です。

はじめに(抜粋)

帝国データバンクでは、従業員不足による収益悪化などが要因となった倒産(個人事業主含む、負債1000万円以上、法的整理)を「人手不足倒産」と定義し、2019年1~12月に発生した倒産について集計・分析した。

 

調査結果(抜粋)

1 2019年1~12月の人手不足倒産は185件発生し、前年比20.9%の増加。4年連続で過去最多を更新し、右肩上がりの推移が続いた

2 業種別件数をみると、「サービス業」が54件を占め最多。「建設業」(49件)がこれに続き、この2業種で全体の過半を占めた

3 調査開始以降7年間における業種細分類別では、「道路貨物運送」が74件で最多。このうち、2019年は28件(前年比21.7%増)。トラックドライバーを確保できず、受注難から資金繰りの悪化を招き、倒産に至るケースが増えた

 

帝国データバンク「『人手不足倒産』の動向調査(2019年1~12月)」より抜粋・引用

 

人手不足倒産って何だろう?

人手不足倒産には明確な定義がありません。イメージ的には「需要はあるのに、人手不足が原因で事業が継続出来ず、倒産してしまう」といったところでしょうか?

帝国データバンクの定義による「従業員不足による収益悪化などが要因となった倒産」とありますが、収益悪化の要因が従業員不足かどうかは経営側の主観的判断に基づいていて、あまりハッキリとした定義にはなっていません。

 

個人的見解になりますが、

今までと同じ条件では従業員を維持・募集が出来ず、かといって労働条件を上げる費用を吸収するほどの収益性が無い会社が倒産に追い込まれた

が「人手不足倒産」の意味だと思います。人手不足が主原因なのではなく、上昇する労働コストを吸収出来ない会社が「人手不足倒産」として淘汰されているのです。

 

 

有効求人倍率の推移

有効求人倍率とは「求職者1人に対して、何人分の求人があったかを示すもので、求職者数よりも 求人数が多いとき=人手が不足しているときは、有効求人倍率が1を上回り、逆のとき=就職難のときは1を下回る」という指標です。

求職者数は公共職業安定所(ハローワーク)に登録している求職者のみで、民間の求人情報誌や転職情報サイトなどの求人情報は含まれていませんが、おおよその労働市場の景気判断が分かる指標です。

参考までに、2008年に起こったリーマンショック直後の数値は「0.4」倍、バブル期のピークだった1990年7月の有効求人倍率は「1.46」倍、2019年の年平均は「1.60」倍でした。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構HP 統計資料
図1 完全失業率、有効求人倍率 1948年~2018年 年平均」より抜粋・引用

 

少子高齢化の加速で、労働人口、特に若年労働者数の減少が著しい日本の労働市場では、どの職場でも「働き手」の奪い合いになっています。地域差・業種差はあるのですが、バブル絶頂期の有効求人倍率よりも2019年の有効求人倍率「1.60」倍は高いのです。

好景気の実感は乏しいかもしれませんが、労働市場では明らかに働く側の「売り手市場」で好景気真盛りです。

 

人手不足倒産は「悪い倒産」なのか?

人手不足になる要因は様々あると思いますが、結局は「給与水準・働き方の条件といった労働条件が他の職場より良くない」だと考えると、労働条件の悪い会社が淘汰されている状況は、一般概論では、悪い状態ではありません。

ブラック企業も、働く側が「売り手市場」ならスグに転職してしまえば良いだけので、理論上ではあっという間に淘汰されることになります。

 

さてここで、人手不足倒産の増加は、日本が少子高齢化による労働力不足によって生じているのかを振り返ってみましょう。

有効求人倍率の推移からも分かるように、労働人口の推移(1960年代~80年代)と有効求人倍率の推移は一致しません。人手不足倒産は景況感が良いときにクローズアップされていて、それは労働人口が原因なのではなく、高賃金が支払える職場と高賃金が支払えない職場の格差(労働条件格差)が拡大することが原因なのです。

 

2018年度 中小企業白書第2部第2節「日本の人口動態と労働者構成の変化」より抜粋・引用

 

「人手不足倒産」は好景気の証で、労働条件の悪い職場を淘汰する機会なのです。

 

新型コロナウィルス・ショックで景気後退が囁かれています。これにより「人手不足倒産」が減るのかどうかは、私は懐疑的です。人手不足倒産が生じている「サービス業」「建設業」では、賃金の高低だけではなく、労働時間や有給休暇の取りやすさ・肉体労働のイメージ等の他の労働条件により構造的に人手不足になっているからです。なんだかんだいっても、日本は「豊かな国」なんだと思います。

(海外から受け入れていた労働者は、入国制限で日本に戻る気を無くしてしまうかもしれませんね)

 

 

テレワークが拡大・定着して、女性や高齢者の働く場所が機会が増えることが人手不足解消となることを願いたいです。

 

 

企業再生人® 小澤隆
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