企業再生人®ブログ

 
セカンド・オピニオン所属の企業再生人®が、企業再生をテーマに発信していきます
カテゴリ:企業再生

企業再生人Ⓡは因果な仕事?

2020年の正月休みに、若手会計士の方の企業再生に関する面白いネット記事を読みました。

なぜ33歳公認会計士が老舗出版社の社長になったのか?
[KKベストセラーズ元社長・初告白]

2018年、週刊誌などでも報じられた老舗出版社「KKベストセラーズ」の身売り騒動。オーナー社長の栗原武夫氏の辞任と同時に、取締役7名が辞任し、新社長に就任したのが塚原浩和氏(33)だ。

これまでメディアのインタビューに応じることはなかった塚原氏だが、今回、初めて取材に応じた。

Bis SPA フラッシュ 2020.01.01配信 より抜粋・引用

老舗中堅出版社の「ベストセラーズ」は、典型的なオーナー経営でした。2018年1月、突如オーナー経営陣の退陣と33歳の公認会計士塚原氏の社長就任が発表されたのです。「謎呼ぶ突然の社長交代」として、週刊誌を中心にちょっとした話題になりました。

 

身売り額は約30億円とも噂され(真偽不明)、この若手会計士は誰なんだろう? 自身が資金調達したのか?再建に来たのか?会社を解体して資産売却し清算する役目を負ってきたのか?と私自身も興味がありました。しかし「ベストセラーズ」は上場企業では無いので情報開示はされず、具体的な全体像はさっぱり分かりませんでした。

 

塚原氏は2019年6月に社長を退任し、ベストセラーズの経営は新株主の下で別の経営陣が担っています。そんな謎の前社長塚原氏が取材に応じて、今回の身売り騒動をメディアに語っていたのです。詳細は是非オリジナル記事を読んで頂ければ、と思います。

 

罵声が飛び交う社長就任

インタビュアー:それは最初から塚原さんが社長になる、という前提があったのですか?

塚原氏:社長になる話が出たのは、買収の主体となってくれるファンドからの依頼ですね。そもそも私は雇われ社長ですから、会社の株は1株も持ちません。あくまで経営のプロとして関わるだけです。

でも、KKベストセラーズの社員からしたら、僕がハゲタカファンドの代表として、金儲けのために会社を潰しに来たように見えますよね労働組合が突撃してくるリスクも踏まえて、ファンドは名前を一切出しませんでした。だから、反発はとても強かったです。正直、就任当日は会長室に社員数十名が突然乗り込んできて、罵声が飛び交うような状況でした。

Bis SPA フラッシュ 2020.01.01配信 より抜粋・引用

ベストセラーズは業績悪化に加え、労使問題の悪化が取り沙汰されていました。

2015年前後から栗原幹夫によるパワーハラスメントなどが伝えられるようになり、東京管理職ユニオンのベストセラーズ支部を結成し、労使関係が急激に悪化したものと考えられる。

ウィキペディア「ベストセラーズ」より抜粋・引用

そんな中、いきなりオーナー経営陣の退陣と、何の面識も無い若手会計士が突如現れての社長就任です。社内の混乱と修羅場が目に浮かぶようです。

 

私自身も似たような経験を多数しています。業績悪化と不信感と負のオーラが漂う会社組織の中に、いきなり落下傘で飛び込むような魔の瞬間です。少し違うのは、オーナー権移動&出資元を隠さないことと、信用される・信用されないに関わらず、「自分が何をしてきたか」「どういう展望を持っているか」を率直に伝える点でしょうか。

何を言っても、最初は「どうせ会社を潰しに来たんだ」と蔑まれるのですのですケド。

 

“雇われ社長”という私の立場は変わりませんから

インタビュアー:しかし、それだけ事業にコミットしていたのに、今は社長を退任されている。

塚原氏:先ほどお話ししたように、もともとファンドは買収先を探していました。それで今年(2019年)に入って無事、新しい株主が見つかったのですが……。結局、新しい株主の目指す方向性が私と違っていたんです。“雇われ社長”という私の立場は変わりませんから、ぶつかっても切られるだけです。また、せっかく社内がまとまってきたところに新たな火種を持ち込むつもりもありませんでした。だったらせめて友好的に、と身を引くことにしたんです。

Bis SPA フラッシュ 2020.01.01配信 より抜粋・引用

 

ここに企業再生の難しさが凝縮されていると思います。企業再生を実行する社長は、誰の利益代表か?という点です。

 

今回の「ベストセラーズ」の件でいえば、公表はされていませんが「買収資金を出したファンド」が存在しています。そしてファンドの利益最大化が塚原氏の一義的役目なのです。上場企業のように会社組織が大きく「所有と経営の分離」が明確なケースでの企業再生を担う社長は、役割分担が分かりやすい。一方で「所有と経営が同一」の中小企業の企業再生では、企業再生を担う社長の役割は、ファンド(株主)と会社組織の間で板挟みになりやすいのです。

インタビューの中で『「もっと自分にできることがあったかもしれない」という思いは、未だにあります。』とある塚原氏の言葉は、とても共感します。

 

私も塚原氏と同じような「途中で梯子を外される」悔しさを経験したあと、あれこれと悩んで試した末、「自分が納得するためには、自己資金による企業再生投資しかない」という結論を出し、それが現在のセカンド・オピニオン社の企業再生投資の源流になっています。

 

いろんな負の感情を一身に受ける経験

インタビュアー:では今後、同じような相談があったときは、また社長をやってみたい?

塚原氏断りますね、残念ながら。企業の厳しい局面に関わることって、いろんな負の感情を一身に受ける経験なんです。自分はそういうことに対して耐性があったんですけど、今回の件は、私自身も将来について真剣に考えたほど強烈な経験でした。

 

インタビュアー:外部からやって来たにもかかわらず、会社に骨を埋める決意をされていたわけですからね。

塚原氏:だから、困っている経営者がいればアドバイスはしますけど、「また自分でやりたい」とは思えないです。いろんな人の人生を巻き込んで、いろんな人の人生を変えてしまう。本当、因果な仕事です。

Bis SPA フラッシュ 2020.01.01配信 より抜粋・引用

企業再生支援として社長や会社にアドバイスをする企業再生コンサルティングと、自らが経営者になって企業再生を実施することとは、雲泥の差があります。

 

「企業再生をやりたい」「企業再生を監査法人・コンサルティング会社でやってきた」という会計士の方と話す機会は多いのですが、どうしてもこの「差」を上手く説明しきれません。

「負の感情が渦巻くギリギリの環境の中で、冷静な判断を下せますか?」
「下手な判断をしたら、従業員の人生を狂わすプレッシャーに耐えられますか?」
「赤字・債務超過の会社を自分のオカネで買い取って再生させる覚悟はありますか?」

という話をするのですが、多くの場合「なんだそれ?」という顔をされるのがオチです。でも、経緯はどうあれ、ほとんどの経営者はそんなプレッシャーを感じ、「経営者の仕事って因果な仕事だ」と思っているのです。

 

 

企業再生人® 小澤隆
企業再生をテーマに情報発信 「企業再生人®ブログ

【玉利ようこ】
企業再生テーマのビジネスコミック 「企業再生人®ブログ

 

コメントは受け付けていません。