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カテゴリ:企業再生

Re-post: 撤退の意思決定

日本市場に参入した欧米の小売り大手は参入・撤退を繰り返します。「撤退」を意思決定するのは難しいというBlog記事の再掲載です。

 

コロナ禍で先行き不透明感から大きな重圧を感じている経営者は多いと思います。従業員を守るために在宅勤務や自宅待機を命じても、彼ら・彼女らが安心して自宅に居られるように、経営者は給料を支払い続けるために奔走しないといけませんから。

 

現在頂いているご相談は、資金繰り不安というよりよりも、実態は経営者の精神的重圧に関するご相談のように感じています。

 

撤退の意思決定(2018年8月22日投稿)

「黒船」、相次ぐ日本撤退=安さだけでは顧客つかめず―米ウォルマート、西友売却へ

商品の大量仕入れで低価格を実現するとして、2000年前後に鳴り物入りで日本市場に参入し、「黒船」と呼ばれた海外の大手スーパーが相次ぎ撤退している。小売り世界最大手の米ウォルマートも、日本国内で300店を超える傘下の西友を売却する方針を固めた。人口減少が続く国内は成長戦略を描きにくい。安さだけでは満足せず、品質に強くこだわる消費者の習性も壁として立ちはだかったようだ。

時事通信 2018年7月14日 配信記事より抜粋)

 

ドンキ社長「売られるなら興味ある」 西友売却巡り

小売り世界最大手の米ウォルマートが売却を検討している傘下の国内スーパー西友について、ドンキホーテホールディングス(HD)の大原孝治社長は13日、「本当に売られるなら興味がある」と述べた。今後、買い手候補に名乗り出る可能性がある。

都内で開かれた2018年6月期の決算説明会で記者の質問に答えた。大原社長は、西友が駅前など好立地に店舗を持つ点を評価。「西友が持っている、今では手に入らないような立地が多数ある。本当に売るのであれば、細かく精査したい」と述べた。

(朝日新聞 2018年8月13日 配信記事より抜粋)

日本市場に参入した欧米の小売り大手は、以下のとおりです(アイウエオ順)。

ウォルマート(米) 西友ブランドで300店舗超展開中。売却報道。
カルフール(仏) 2005年撤退(イオンに売却)
コストコ(米) 全国に26店舗展開中
テスコ(英) 2013年撤退(イオンに売却)
メトロ(独) 首都圏に10店舗展開中

ウォルマートは直近の売上が5,000億ドル(約55兆円)、世界15ヵ国に展開する、小売り業界だけでなく全業界含めての売上高世界1位の巨大企業です。世界小売り業界第2位のカルフール(仏)の3倍超の売り上げ規模を誇ります。

ウォルマートの市場撤退は日本が初めてではありません。2006年に韓国市場(韓国内16店舗を新世界百貨店に売却)、ドイツ市場(ドイツ国内85店舗はメトロに売却)から撤退しています。

 

撤退の意思決定

事業撤退の意思決定の成否は、その後の結果を見ないと誰も分かりません。一般的に撤退の意思決定は、新規参入の意思決定よりも難しいと言われます。

行動経済学では、「コンコルド効果(サンクコストの呪縛)」と「保有効果」という認知バイアスを提唱しています。

 

コンコルド効果(サンクコストの呪縛)

何かへの金銭的・精神的・時間的投資をしつづけることが損失につながるとわかっているにもかかわらず、それまでの投資を惜しみ、投資がやめられない状態」を指します。超音速旅客機コンコルドの商業的失敗が名前の由来です。

投資を継続しても失敗が見えているなら、追加出資はすべきでありません。それでも人間の頭の中で、「今まで投資した分が勿体無い」「もしかしたら、何かで上手くいって既存投資を回収できるかも」という感情に流されて、往々にして、既存投資金額以上の損失を拡大させてしまう結果を招きます。

 

保有効果

自分の所有物になったモノに対して、高い価値を感じて手放せなくなってしまう状態」を指します。まったく同一のモノであっても、自分が持っているモノは他人が持っているモノよりも価値が高く感じます。執着心のような心理状態です。「自分が選んだモノ、自分が保有しているモノ」という心理効果が働いているのでしょう。

M&Aの際に感じるのですが、「自分の事業は他人の事業とは特別だ。なぜなら・・・」という会話が経営者から必ずと言っていいほどあります。傍から見れば「特別」でもなんでもなく、ただの事業パターンや事業カテゴリーの一種程度にしか感じていなくても、当事者にとっては「特別なモノ」「特色のあるモノ」と強く感じているのです。

 

立場が違えば、意思決定の結果も異なる

評論家ぶって「コンコルド効果」や「保有効果」を説明していますが、私自身、撤退のタイミングを誤って財政的惨事を招いたときは、まさしくこんな心理状態でした。お知り合いのM&Aアドバイザーから、「小澤さん、アナタの保有している事業は特色なんかありません。悪い事言わないから、早く損切りした方が良いよ」と言われたことを鮮明に覚えています。

 

面白いことに、コンサルタントとしての立場で思考するのと、実際に経営者として思考するのとでは、同じ人間であっても意思決定の結果が異なるのです。人間は弱い生き物です。経営状況が厳しい現実の中で「いつも通りの意思決定」をするのが如何に難しいのかを学んだ貴重な体験でした。

 

その後に続いた金銭的苦境から、「撤退の意思決定は、周囲から何を言われても気にせず、迅速に!」を骨身に染みて実感しました。投資の格言「見切り千両、損切り万両」です。余力を残して撤退すれば将来に再参入も可能になりますが、執着心から破綻状態まで行ってしまうと、復活の道筋まで失ってしまうのです。

 

セカンド・オピニオン㈱代表取締役
企業再生人® 小澤隆
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