企業再生Media

コラム

 
仕事の合間に、ちょっとひと息つけるコラムをお届けします。

カテゴリ:
2011年3月11日 ⑥『疎開ということ』

311の後、放射能不安の中で生じた様々な現象の中で、もっとも自分の心を苛立たせたものがある。

その時、被害者として一括りされるはずの「国民」の心の奥の方にピシリと亀裂が走ったのを記憶している。

 

それは疎開という言葉だった。

 

海外の知人などから寄せられる、国外避難が必要であれば、受け入れるので遠慮をするなというメッセージ、幼児を持つ母親が、東京から遠隔にある故郷に里帰りをする。海外に避難する富裕層等々。

既存メディアとツイッターなどの新しいメディアが競い合うように、事実と虚言とがないまぜになって情報の暴風を巻き起こした。

そんな情報の嵐の中で、引き続き、東京で生活をし、働き続ける自分や家族には、疎開するなどできないことを認識した時に、国外避難、疎開などという言葉に紐づく人々との断絶を感じたのである。正直言って、憎悪とまでは行かずとも、強い嫌悪感であったことは告白しておくべきだろう。

 

311という事件が、その後の日本人の心に与えた影響の全貌はいまだ明らかになっていない。しかしその前後で、そもそも事実として存在してはいなかったにせよ、一体感という意識が、幻想のレベルでも決定的に否定されたのだろう。

311によって直接に傷ついた人より、傷つくことへの不安の中に置き去りにされた人々の感じた格差が、今になるまで増幅しながら続いている不公平感のライトモチーフになっているのかもしれない。

そして、それは、他を排除するものとしての個人を基礎に組み立てられてきた、国民国家、国民福祉、民主主義などのなじみぶかい制度の経年劣化を加速させ、社会により大きな負荷を与え続けているのかもしれない。

 

2011年3月16日

TELL記事(英文)より抜粋。翻訳:紙魚】

2001年3月15日(火)東京時間17時に、英国の主席科学顧問のSir John Beddingtonと英国保険省の緊急対応の副長官のHilary Walkerが電話による状況説明(briefing)を行った。

“Unequivocally, Tokyo will not be affected by the radiation fallout of explosions that have or may occur at the Fukushima nuclear power stations.”

明らかなのは、東京が、福島の原子力発電所でこれまで生じた爆発や今後生じる可能性のある爆発による放射性降下物(radiation fallout)によって影響を受けることはないことだ。

危険区域は、30kmの退避圏内である。福島1号機、2号機で現在行われている緊急対策に直接に関わる人々以外には、誰もこの地域に入るべきではない。

Sir Johnは、チェルノブイリと日本の比較も行った。

「チェルノブイリと福島の事故は全く違うものである。チェルノブイリは爆発後、放射性物質が延焼し、空中3万フィートにまで舞い上げられた。福島の爆発はせいぜい500メートルぐらいの高さまでにしか上がっていない。」

“The radiation that has been released is miniscule and would have to be orders of 1,000 or more for it to be a threat to humans.”

「放出された放射線も極小で人体に脅威を与えるには1000倍以上になる必要がある。」

さらにこれまで日本政府は、原子炉を冷却するためには最善を尽くしており、今もそれは継続している。緊急事態に対応している現場の作業者はすべて、シフトの終了後に、完全に汚染浄化されている。

When asked on how reliable was the information coming from the Japanese authorities as to radiation levels he said “this cannot be fabricated and the Japanese authorities are posting all the readings on the recognized international information sites which they are obliged to do.

日本政府が発表する放射線レベルについての情報の信頼性をどう思うかという質問に対して、日本政府は認知度が高く、情報提供を義務付けられている国際的情報サイトにすべてのメッセージを掲載しているの、捏造は無理である。

第三者による検証によって、日本政府が提供したデータが正確であることが示されている。

東京のブリティッシュスクールの校長からの質問に答えて、停電や交通問題が生じない限り、学校を閉鎖する必要はないと答えたという。

東京の英国大使館のFirst MinisterのDavid Fittonが電話会議のモデレーターだった。本日のブリーフィングの記録は本日中に英国大使館のウェブサイトに掲載予定である。

 

3月17日午前5時半


2011年3月17日東京新聞朝刊 【3・11後 一週間の東京新聞一面(2011年)より】

 

今まさに、危機的環境で、大きなパニック、小さなパニックが生まれるプロセスを実際に経験している。

物流の世界では、コンビニやスーパーから、水、トイレットペーパー、電池などが消えている。これは一部の買いあさりというよりは、多くの人々が少しずつ当該商品を買うことで、巨大な需要が生まれているためなのだろう。

不安と情報不足がこういった状況を作り出す。

最近は英国大使館や米国大使館が、自国民に対してどのような指示を出すかが、さまざまな憶測を呼んでいる。

当初は、放射能がどれだけ広範囲の人間に悪影響を与えるかということが、被災地以外の人々の不安の中心にあった。

昨日、英国大使館に対する専門家のブリーフィングの中で、チェルノブイリとの決定的な違い、現状の立入禁止地域以外の場所での深刻な放射能汚染の可能性を否定した。これは、なんとなくではあるが、安心感を作り出す役割を果たした。

ところが今日ツイッターを見ていると、米国大使館が20kmではなく、80kmへ立ち入らないことを勧告したとか、東京以北に住む自国民に対して英国大使館も退避勧告をしたとかが、新しい思惑を生んでいる。

ツイッターの持つ悪さは、文字数が少なく、ある意味、スポーツ新聞的見出しが、強烈な増幅性を持つことだ。

英国大使館の説明を見ると、東京に対する退避勧告は、放射能というよりは、物流やインフラ、交通機関の問題が発生するためという理由である。

これはある意味わかりやすい話だ。

日本人に比べれば、外国人は、危機の状況における対応能力が劣る。それはサバイバル能力が日本人より一段落ちることになるわけで、この退避勧告は妥当だと思う。

外国人向け勧告を受けて、日本人が右往左往するのは間違いだと思う。

 

2011年03月17日

米国大使館の米軍や自国民への避難勧告の背景を説明するNYTの記事を読む。一部要約してみた。

U.S. Calls Radiation ‘Extremely High’ and Urges Deeper Caution in Japan
(By David E. Sanger and Matthew L.Wald)


米原子力規制委員会 Nuclear Regulatory Commissionの委員長が、日本の原発危機に対して、日本政府よりかなり厳しい評価を発表した。その結果、米国民に対して日本政府が設定した立入禁止区域より広い地区からの退避を勧告した。

Gregory Jaczko委員長は、議会において、福島第一原発の第四号機の使用済み燃料棒用のプールの水はすべて蒸発してしまっていると思うと証言した。そのため、プール内の燃料棒が露出し、放射線がにじみだしているだろうと。そして放射線水準は極めて高く、対応努力の遂行能力におそらくは重大な影響を及ぼす可能性があると結論づけている。

彼の分析が正しく、現場の作業チームが現在も、プールを水でいっぱいにして、原子炉の使用済み燃料を冷却させることができない場合には、現場の放射線レベルは、第四号機の修理を困難にするだけでなく、第一原発で他の問題のある原子炉での作業も困難にすることになる。

彼の証言に基づいて、東京のアメリカ大使館は、原子力規制委員会(Nuclear Regulatory Commission)のアドバイスを受けて、アメリカ人に対して、福島原発から半径約50マイルからの退避を勧告した。これは日本政府の退避勧告である20km(12マイル)、屋内待機の20kmから30kmよりはるかに広い範囲となっている。

彼の証言は、日本政府が今置かれている問題を明らかにしている。すなわち、放射能の極めて高い領域に少数のチームを送り込んで、プールへの注水を行い続けるか、作業者を守るために、プールを放置して、より広範なメルトダウンを引き起こすかである。

日本政府は、現場の状況をJascko氏ほどは詳細に説明していない。日本政府は、使用済み燃料の完全露出というJascko氏と違う見解を持っている可能性もあるが、見解は同じでも、人々にパニックを起こさせないために説明しないことを選択した可能性もある。

燃料プールの水がすべて蒸発した状態で、作業を行うのは極めて困難である。通常の状態では、水が、冷却だけでなく、作業者をガンマ放射線から遮蔽する働きを果たしている。ヘリコプターから水を放出するという方法は、放射性の蒸気の水柱の中に突入するというリスクからいったん取りやめられている。

Jaczko氏の分析は、こういった状況が連鎖して、原発全体での対応作業のすべてを困難にする可能性があることを示唆している。

ペンタゴンは水曜日に、日本のアメリカ軍は、原発の50マイル内への立入禁止を命じたと発表した。そしてヘリコプターの乗員等には、放射能からの影響を避けるために、ヨウ化カリウム(potassium iodide)を服用しているという。

日本政府や東京電力は詳細を明らかにしてはいないが、対応作業の継続を示唆している。
(以上)

 

2011年03月18日


2011年3月18日東京新聞夕刊 【3・11後 一週間の東京新聞一面(2011年)より】

 

朝4時ぐらいから、ラジオやインターネットで状況を確認するというのが一日を始める際の習慣になった。今日で、地震発生から1週間。

長い1週間だった。

多くのことが短期間に詰め込まれて生じると、人間は時間の長さを感じるのだろう。

現時点の課題は
1 津波や原発事故の影響で避難を余儀なくされた40万人以上をどのように支援するか

2 継続中の福島原発事故からの放射線漏洩の問題を早期解決すること

3 被災地や、福島原発に3分の1近くの電力供給を依存してきた首都圏の緊急対応策

4 国民の中に深刻なパニックを引き起こさせないための努力

などだろうか。

 

とりわけ、昨日は日本人や外国人の不安心理が相互を増幅していくプロセスが特徴的だった。

英米の大使館の自国民に対するアドバイスの前提にある物事の見方と、日本政府の公式発表の乖離が、結果、日本政府の公式見解への信憑性を揺るがした。

外国人が大量に出国していたり、外資系企業が関西に本拠地を移動させるなどという報道と、おそらくは東北地方の被災地からの関西地区への自主的避難の動きに伴う、新幹線の混雑という報道が、輻輳して、首都圏の人々の不安感を増幅していっている。すると首都圏に住む日本人の中で関西地区に実家のある人々で幼児などを抱える人々が、一種の里帰りを行う。

というような一種のスパイラルが起こり、それを反映して、ツイッターなどで、スポーツ新聞のヘッドライン的な形で、疎開論批判、楽観論批判の押収がなされていくというような心理的増幅が起こってくる。

昨日のツイッター、ラジオなどを眺めていて感じたのはそういった動きだった。

内田樹さんの疎開のすすめを池田信夫さんが批判したり、内田さんが応酬したり。

それぞれの意見を、じっくりと読めば、それぞれに一定の見識を持っているわけであり、十分な時間を経た議論があれば、共通点、相違点も明らかにできるのだろうが、ツイッター的な表層増幅装置がその感情的応酬の部分だけをハイライトしていく。

 

ツイッターというものは普通のメディアではない。良いところも、悪いところも過剰になってしまう可能性が高い。

ぼくは朝、ツイッターのTLで多くのオピニオンの存在を確認する。ツイートに貼られたURLをたどって、そのオリジナルを読み、その発言が依拠するオリジナルをさらに辿るという作業をその後行っている。

当然ながら、ツイッター的なスピード感の中で受信、発信を繰り返すということはしない。

むしろツイッターという急流の中から、自分にとって価値のあるものを掬い上げて、岸辺でじっくりと吟味して、自分が情報の急流のなかに戻す意味のあるものだけをブログやツイッターを通じて発信することにしている。

今日は、海外政府の自国民へのアドバイスの動きをひきつづきフォローすることと、エコノミストやフィナンシャルタイムズなどイギリスのメディアによる、今後の日本、世界経済への影響に対するマクロ的な分析を読むことを始めようかと思っている。

 


【 紙 魚 】
心に栄養補給 「コラム」をどうぞ!

 

コメントは受け付けていません。