法人保険(法人向け生命保険)のウソ(2)
法人保険(法人向け生命保険)のウソ(1)の続きです。
今回は法人保険でいう節税とは何なのか?がテーマです。
一般的に節税とは、①税金金額を永久に減少させる手法と②税金の納付時期を時期以降に先送りして当年度の税金納付額を減少させる(税金累計納付額は変わらない)を指します。①税金金額を永久に減少させる手法は極めて限定的で、ほとんどありません。多くの場合、②の税金納付時期を先送りする方法を意味しています。
さて、法人保険の説明では「課税の繰延べ」という概念が出てきます。これは「課税時期の繰延べ」という意味に使われ、前述の節税②のパターンと似ています。これが曲者なのです。
「課税の繰延べ」とは、他の条件が同じままで課税時期(税金の納付時期)を先送りすることです。「居住用財産の買換え特例」がまさしくこのケースに該当します。ところが法人保険の言う「課税の繰延べ」は違うのです。
法人保険は本当に節税出来るのか?
法人保険のメリットとデメリットを再掲します。
【メリット】
① 一般的な節税方法よりも節税効果が高い
② 資金調達の手段として使える
③ 将来の退職金に備えることが出来る
【デメリット】
① 保険を使った節税は課税の繰り延べに過ぎない
② 会社のキャッシュフローが悪くなる
③ 解約のタイミングを間違えると損をする
この説明にも私は悪意ある誘導を感じます。本来は節税効果がないのに節税概念を強調させるため、メリット・デメリットという分断した説明にしているからです。メリット①とデメリット①②はワンセットなのです。
どういうことか、ストーリー形式で見ていきましょう。
法人保険の本当の効果
S株式会社の損益計算書です。モデルを単純化するため、毎年500の利益を安定的に計上する会社にしました。実効税率は一律40%です。
×1年に、このS会社の社長は「500の利益に対して払う法人税は200かぁ。勿体ないなぁ。何か良い節税策は無いのだろうか?」と悩みます。そこで顧問税理士に相談すると、保険会社外交員を紹介され、その保険会社外交員から「法人保険」を推奨されます。その内容は
・毎年200の保険料。保険料は全額損金となる。
・期間5年 保険受取金は支払保険料総額と同じ200×5年の1,000。
というものでした。この法人保険は一般的な節税商品で、法人税を減らせるというのです。推奨された法人保険を導入すると、こうなります。
なるほど、×1年は確かに法人税が200から▲80減って120になりました。毎年の保険料200は5年後には保険受取金で戻ってくるので損もしない。メリット①のとおりです。メデタシ、メデタシ。これが法人保険に対する一般的理解です。
あれ?でもキャッシュフローは悪化していますね。そう、デメリット②「キャッシュフロー悪化」です。
デメリット①「保険を使った節税は課税の繰り延べに過ぎない」のとおり、5年累計を見ても、法人保険を使おうが使うまいが、法人税合計1,000は同じで変化ありません。
何かイメージと違う!
本当の効果はこうです。「毎年、保険料相当の利益200とこれに対応する税金▲80&Cash 120を保険会社に預け、5年後に5年間分まとめた利益1,000、対応する税金▲400、Cash 600を戻してもらう」です。税金だけを先送りしているのでなく、利益とキャッシュフローも同時に先送りしているのです。この効果にどんなメリットがあるというのでしょう?
「課税の繰延べ」とは、他の条件が同じままで課税時期(税金の納付時期)を先送りすることです。税金総額を減少させるのではなく、課税時期を先送りすることでキャッシュフローを改善することが「課税の繰延べ」のメリットです。一方、「法人保険」の効果は、毎年のキャッシュフローを悪化させて、保険満期時にその悪化相当分を纏めて返してもらうだけなのです。これはもう、節税メリットどころか、デメリットでしかありません。
更に恐ろしいのは、デメリット③「 解約のタイミングを間違えると損をする」です。これは保険満期若しくは数十年という長期の保険支払期間を過ぎないと、途中解約した場合、解約返戻金として戻ってくるのは支払保険料総額を下回ることを意味しています。これでは大損です。キャッシュフローを悪化させるだけでなく、途中解約すると本当に損までしてしまう商品です。
私にはこの法人保険のメリットがさっぱりわかりません。そこで、保険外交員に「いったいこれのどこにメリットがあるのか?」と質問します。( 次回「法人保険(法人向け生命保険)のウソ(3)」に続きます。)
セカンド・オピニオン㈱代表取締役
企業再生人® 小澤隆
企業再生をテーマに情報発信 「企業再生人®ブログ」
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