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カテゴリ:企業再生

『黒字廃業企業』と『個人M&A』

サラリーマンが会社を買う!個人M&Aで逆転人生?
NHK クローズアップ現代 2019年6月26日(水)放送

サラリーマンが中小企業を数百万円で買い、オーナー社長に転身する。そうした個人M&Aが注目を集めている。人生100年時代に老後不安を抱くサラリーマンたちが、M&A情報サイトで後継者難の中小企業を探し、買収に乗り出すのだ。

こうしたブームに注目した地方都市の中には、個人M&Aを志す人々を集団で招き、地元企業の事業承継を丸ごと任せてしまおうという動きすら出てきている。いま、全国の中小企業の3分の1にあたる100万社以上が廃業するという「大廃業時代」。団塊の世代の経営者たちが後継者不足から廃業を余儀なくされている。その半分は黒字廃業だ。

サラリーマンでも払える数百万円の対価でも、事業を他者に引き継ぎたいと考えている。買い手は、成功すれば役員報酬と営業利益を得られ、中には、買収して1年半で収入がおよそ倍になったという人も。一国一城の主としてやりがいも得られ、後継者不足に悩む中小企業の大量廃業という社会課題の解決にも貢献できるとして、会社の売り手と買い手をつなぐマッチングサイトや、買収のノウハウを伝えるサロンにも会社員が殺到している。

しかし、この新たな道も甘くはなく、経営に行き詰まる人も少なくない。「老後夫婦で2千万」という話題が世間の耳目を集めるなか、資産形成の選択肢のひとつになるのか?個人M&Aの可能性と課題を探る。

 

NHKサイト「クローズアップ現代」より抜粋・引用

 

個人M&Aが俄かにブームになりつつあります。中小企業の後継者難の解決策の一つとして注目されています。

私自身が個人M&Aを最初に実施したのは15年以上前です。当時は「サラリーマン会計士が個人で会社を買う」行為はあまり無く、周囲から奇異の目で見られました。ストレートに表現すると「バカ」呼ばわりです(笑)。

 

この当時を振り返ると、現在のブーム状況は隔世の感があります。

その後も個人M&Aを繰り返し、幸運にも日本を含む海外10か国以上で展開できるビジネス規模まで成長していったせいでしょうか、「個人M&Aブームは本物か?」「個人M&Aはどうやったら成功するのか?」という質問を受ける機会もあります。

 

私にとって個人M&A自体が目標ではなく、個人M&Aは企業再生の選択肢としてしか捉えていないので、個人M&Aのブーム隆盛に興味はありません。また、個人M&Aは別に最近ブームになったわけではなく、江戸時代・明治時代から現在に至るまで頻繁に実施されてきた経済行為だと認識しています。

 

ブームになるニュースで出てくるフレーズには、ミスリードされるフレーズが多いので、今回はその点を解説したいと思います。

 

全国の中小企業の3分の1にあたる100万社以上が廃業するという「大廃業時代」

このフレーズをセールストークとして熱心に説く方が多いのですが、その度に修正を入れさせて頂いています。大抵はイイ顔をされないのですけどね。

〇100万者(個人事業主の形態を含む)
×100万社

 

日本全国に会社は300万社も存在しません。日本にある会社(法人)数は168万8千社です。母数になっている300万という数字は中小企業(中規模企業+小規模事業者)385万3千者から由来していて、そのうち半数以上が法人でない個人事業主217万5千者で占められています。何を言いたいかというと、「大廃業時代」で廃業が見込まれているという100万者の多くは、個人事業主企業を中心とした5人以下の「小企業者」(一般に零細企業と言われています。)という事実です。

日本の企業の99%は中小企業」企業再生人ブログ別記事 参照

者」と「社」も大した違いはないじゃないか!とメディアの方に言われそうですが、後述する黒字(利益)の概念が会社(法人)と個人事業主では全然違うのです。

 

また従業員5人以下の「小企業者」というと、その事業の多くの要素が経営者個人の資質に依存していて、経営者が高齢で引退する場合は、経営者といっしょに事業も廃業する姿がむしろ自然だと思っています。

この「小企業者」が経営者個人資質とは別に“組織”として成立していて、事業に何らかの“競争優位”な点を持っていれば、もちろん第三者によるM&Aの対象になります。逆にそうでなければ、個人M&Aの実態が、前の経営者個人の資質(長時間労働や高くない報酬などを含む)を第三者たる個人が肩代わりする程度のものに成り下がってしまう可能性が高くなります。

 

廃業する会社の、半分は黒字廃業??

△「廃業する会社の、その半分は黒字廃業だ」
△「半分は黒字廃業だと言われている」

〇「先行き不透明で後継者が見つからず、半数がまだ黒字であるうちに廃業した」

 

「廃業する会社の半分は黒字廃業」というフレーズのソースは、中小企業庁が公表している「2017年版 中小企業白書」の中の「第1部- 第2章 – 第1節3廃業企業の現状」の記述です。

この中で、下記のように記述されています。

休廃業・解散企業の業績について見ていく。
2013年から2015年までの期間で休廃業・解散した企業84,091者のうち、廃業直前の売上高経常利益率(以下、利益率とする。)が判明している企業(注8)6,405者について集計したデータをもとに、休廃業前の利益率を確認すると、利益率が0%以上の黒字状態で廃業した企業の割合は50.5%と、半数超の企業が廃業前に黒字であったことが分かる(第1-2-14図)。また、利益率が10%以上の企業が13.6%、20%以上の企業が6.1%と、一定程度の企業は廃業前に高い利益率であったことが分かる。

 

(注8)具体的には、廃業年と同年もしくは前年の売上高経常利益率が判明している企業について、直近の売上高経常利益率を用いており、利益率が判明していない企業を合わせると、黒字状態で廃業した企業の割合は低下する可能性があることに留意する必要がある。

 

「なんだ、企業84,091者の中の6,405者の話か?それも売上高経常利益率が判明している企業のみって、元々利益率が高い企業が母集団なのでは?」という揚げ足取り話ではありません。

 

対象となった廃業企業6,405者(会社+個人事業主)を考えるうえで、以下の①~③の基礎知識が必須です。これらを踏まえて、一部の数値だけをピックアップするのではなく、数字の意味を考えて欲しいと思います。

 

① 廃業出来る会社は資産超過会社のみ
廃業する(出来る)会社(法人)とは、債務超過ではない資産超過会社です。債務超過の会社は破産手続(俗にいう「倒産」)になってしまうので、自発的に廃業出来ずに、ここの集計に入ってきません。廃業する法人とは、そもそも黒字基調である可能性が高いのです。

 

② 母集団の大多数が従業員5人以下の「小企業者」
また従業員5人以下の「小企業者」会社(法人)では、オーナー経営者の役員報酬を増減させればスグに黒字にも赤字にも出来ることが可能です。

 

③ 個人事業でいう黒字とは?
一方、個人事業でいう黒字とは、個人事業主の報酬(給与相当)控除前の状態です。会社(法人)の「営業利益+役員報酬」が個人事業企業の「黒字」に相当します。個人事業でいう赤字状態とは、個人事業主の報酬をゼロにしても赤字になっている状態であって、事業継続してきた個人事業でそのような状態はそもそも考えにくいのです。

 

これらを考え、また中小企業白書の他のデータから総合的に判断すると、

△「廃業する会社の、その半分は黒字廃業だ」

でなくて
〇「先行き不透明で後継者が見つからず、半数がまだ黒字であるうちに廃業した」
が正しいと思っています。

 

どうやったら個人M&Aは成功するのか?

こういう質問を受けたとき、逆に質問で答えています。

 

個人M&Aされる企業の従業員の立場で考えてみましょう。もし、アナタが「会社勤め」がイヤだからと考えて数百万円~数千万円の貯金を使い切って、引退したい事業主から個人M&Aをしたとしましょう。

相手の従業員はどう考えるでしょう? 会社経営の経験もなく、業界知識も取引先との関係も無く、資金不足になったら追加投資できる資金力もない。あるのはサラリーマン人生での従業員視線での経験とプライド、そういうオーナー経営者のもとで安心して働けますか?

どういう人だったら、個人M&Aの後でも、アナタは安心して働きたいと思いますか?」

 

個人M&Aを否定する気は全くありません。私自身、その経験者でもありますし、後継者問題の大きな解決策の一つだと思っています。ただ、ブームじみたニュースの扱いには「???」と思います。

 

 

セカンド・オピニオン㈱代表取締役
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