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カテゴリ:企業再生

大戸屋「お家騒動」の顛末

先日、シンガポールの日本食チェーンレストランの「大戸屋」に入る機会がありました。シンガポールに「大戸屋」は3店舗あり、日本とほぼ同じメニューを楽しめます。

 

大戸屋といえば、昨年2019年に、居酒屋「甘太郎」などを運営するコロワイド(東証1部7616)が、大戸屋ホールディングス(東証JQ2705)の株式18.65%相当(約30億円相当)を取得して筆頭株主になりました(2019年10月7日コロワイド社提出「大量保有報告書」より)。

焼肉「牛角」、回転寿司「かっぱ寿司」をはじめ飲食店チェーン買収に積極的なコロワイド社と大戸屋がどのような事業展開を臨んでいくのか?という興味以上に、「あぁ、創業家vs経営陣による『お家騒動』が完全に終わったんだな」という感想の方が大きかったです。

 

大戸屋のお家騒動

お家騒動の時系列です。

(注1)お骨事件
「三枝子夫人が突然に大戸屋を訪れ、社長室の机上に久実氏の 遺骨を置き、窪田社長に対し、『主人があなたを見ている。窪田、社長を辞めなさい。そして、智仁を社長にしなさい』と迫った」とされる事件

 

簡単に纏めると
① 後継者問題
創業家側は元会長死去後、実子:智仁氏への早期社長就任を求めたが、経営者側は当時26歳だった智仁氏の社長就任は経験・能力的に時期尚早であると判断していて、亡会長の後継者表明意思も「将来的に社長就任」という意図だったと理解していた。

② 功労金問題
生命保険金約12億円を原資にして、8億円前後の功労金支払を予定。これにより大戸屋株式の創業家相続に伴う相続税支払(約5億円)をカバー、創業家の株式保有割合を減少させない元会長の意図があった。一方経営者側は、「負の遺産(赤字事業)」の整理が優先で、生命保険金の原資はこの整理へ充当させたかった。結果、当初予定より1年半遅れで2億円に減額された功労金支払を決議した。

の2点が双方の確執原因になっています。

 

実質的創業者の元会長の死去から始まった創業家vs経営陣の確執は、創業家側が会社から追放された形になった後、日経トップリーダーや東洋経済等の経済誌に対し「お家騒動の内幕」を喧伝する泥仕合にまで発展し、大戸屋のイメージに影を落とす事態になりました。

 

コンプライアンス第三者委員会「調査報告書」

大戸屋HDコンプライアンス第三者委員会「調査報告書」及び「調査報告書(補充)」では、創業家側へのヒアリング調査が実施されていないので経営者側からの視点のみでの調査結果になっていますが、努めて中立的な意見表明をしようとしているように見受けられます。

智仁氏の特権的な昇格

「会長からセンチュリーハイアット2階のラウンジに僕を含め数名呼ばれて。その時は怖くて、僕(窪田社長)をにらみつけるような感じで『智仁を役員にする』という話があった。 僕としても、将来的には智仁氏が担っていくのは会長も望んでいたことだと思うので、抵抗感は全くなかった。

しかし、同時に『国内のトップにしろ』と言 われたのには『さすがにそれはできない、会社がもたない、結局僕が全部見ることになる。それに、今までプロパーでやってきた人間が納得しない』と言った。そしたらまあ、ということだったが、僕に対してすごい形相だった。あんな顔は初めて見た

その後しばらくしてから、『であれば、海外だ、海外の責任者をやらせろ』と。そこも、ん?と思ったが、会長のご病気と余命を考えて、 海外は濱田専務が見ていたので彼と一緒にやっていくなら問題ないかなと思い、『わかりました』と。だから本来の経営判断とは違う判断をした

そうしたら、『常務にしろ』と。それも、ん?と思ったが、専務・常務は所詮肩書なのでどっちでもいいと思った。教雄先生からも脳の腫瘍があって話もできなくなるから、それまでに話をしておいてくれと言われていたので、いろんなことを考えて了解した」

「調査報告書」 P.8~P.9 より抜粋・引用

 

お骨事件

窪田社長が当時作成したメモには、その際、三枝子夫人は、30 分ほどにわたり、 窪田社長に対し、
「あなたは大戸屋の社長として不適格。相応しくないので、智仁に社長をやらせる」、
あなたは会社にも残らせない」、
「亡くなって四十九日の間もお線香を上げにも来ない」、
「何故、智仁が香港に行くのか」、
「私に相談もなく、 勝手に決めて」、
「智仁は香港へは行かせません」、
「9 月 14 日の久実のお別れ会には出ないでもらいたい」
などと述べたことが記されている。

「調査報告書」 P.13~P.14 より抜粋・引用

 

「調査報告書」の文体なので読みづらい箇所もありますが、まるで経済小説のような描写もあるので、お時間があれば是非、オリジナルをお読みください。

この「調査報告書」で読み取れるのは、どちらが正しいというものではありません。私が気になったのは、経営者側と創業家側の信頼関係を損なわせる仲介役の存在です。いったん予定した功労金の経営者側による支払中止にしろ、纏まりかけた和解案の突然の創業者側による破棄にしろ、せめてもう少し直接対話があればなぁと思いました。

 

創業家側のその後

大戸屋を追放される形になった創業家側三森智仁氏は、大戸屋から離れた後、高齢者向け外食宅配システム運営の株式会社スリーフォレストを立ち上げてます。

大戸屋創業者の息子が宅配事業を始めるワケ
きっかけは「店舗経験」と「祖母の存在」だった
(東洋経済online 2018/1/25 配信)

 

株式会社スリーフォレストHPによる会社概要(従業員5人、本社はレンタルオフィス 2020年2月20日現在)から察するに、まだまだ事業初期の段階のようです。

 

一方で、コロワイド社が筆頭株主になった大戸屋経営陣側も、コロワイド社に飲み込まれないように会社運営にはかなり神経を擦り減らされるのではないでしょうか。

 

創業家vs経営陣による『お家騒動』は収束したものの、双方に大きな傷跡を残した顛末でした。

 

セカンド・オピニオン㈱代表取締役
企業再生人® 小澤隆
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