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Connected Cars;自動車会社はすべてソフトウェア会社になる
Radikoというインターネットラジオが、On Demand 聴衆という革命を起こしている。ほんのわずかな月額料金を払えば、全国のラジオ放送が1週間、いつでも聞くことができるのだ。このサービスによって、少なくとも、一定の顧客層にとってスマートフォンの価値がぐんと上がったのである。
それまでは、英語のリスニング強化の意味もあって、大量に無料で提供される英語のポッドキャストを聴くことが多かった。
実際、無料でかなり質の高いラジオ番組が聴くことのできるポッドキャストというのは英語であるという制約を除けば、夢のような仕組みである。日本に比べて、アメリカのポッドキャストの圧倒的なコンテンツ供給力の背景には何があるのかということが少々気になっていた。
正確な分析ができているわけではない。
ただ聴取環境というものが持つ意味は比較的明らかな気がする。
アメリカのポッドキャストブームは、日本と同じように、聴取環境としてのスマホの普及の影響が大きいのは間違いない。
しかし、日米の差となっているのは、もう一つの聴取環境である、自動車移動の各国事情にあるように思える。
自動車通勤の多いアメリカにおいては、聴取環境として重要な車内聴取が進化しているということが重要な要因なのだろう。
とりわけ、最大の広告主の一つでもある自動車産業にとっての戦略的意義という観点からも、インパクトは大きい。
一回きりの取引モデルから、継続的取引モデルへの移行を余儀なくされる自動車業界にとっては、Connected Carというコンセプトの実現がその死命を制することになる。
ソフトウェアプラットフォームとなった自動車に、オーディオプラットフォームとしてのポッドキャストは多層的な意味を持ちだしているのだろう。
ハフィントンポストが、Connected Carについての、フォードモーターの戦略についてコラムを載せていたで、要約してみることにした。
産業としてのポッドキャストはどこへ向かうのかという関心から始まった、チェーンリーディングが、結局は、世界最大のビジネスの一つである自動車産業の激変の様相の一つであることがわかってきた。
この記事を読んでいて、トヨタが新しいタイプのエンジニアや才能を集めるのになぜ必死なのかがよくわかった気がする。
それは未来の自動車が、文字通り、多くのソフトウェアを走らせるためのプラットフォームになっていくからなのである。そしてそれは従来型の自動車メーカーが決して得意な分野ではない。そういう危機意識は数年前から語られている。
しかしそれが自動走行車の事故という形で、現実にどんどん突き刺さってきている。この事故は、自動走行車という革命へ向けた単純なマイナスにはならない。おそらくその悲劇を貪欲に飲み込んで、より大きな現実の力に変えていこうとする潮流が見え始めている。
「Connected Cars;自動車会社はすべてソフトウェア会社になる」
2011年にマーク・アンドリーセンはソフトウェアが世界を食い尽くすと宣言した。
様々な業界で、新世代のテクノロジー企業の力が増大し、持続的競合優位性を確立し、ソフトウェアのイノベーションを推進することで、マーケットシェアを拡大するという予測だった。
2015年になってみると、アンドリーセンの理論は、自動車も含む全産業で実証されている。
デジタル変革は、地球上最大の自動車産業にも及んでいる。
我々は、自動車技術に日々触れている。
自動車業界にとってのデジタル変革(Digital Transformation)は、自動車が、データ、センサー、アナリティックスに基づくソフトウェアベースのサービスを提供するためのプラットフォームになるということだ。
未来が加速度を増して近づいてくる中で、自動車は、本当の意味でのモバイルIoTの世界と自動運転へのシフトを代表するものとなってきた。
フォードモーターのConnected Vehicle and ServicesのDirectorのDon Butlerは、製品開発、IT,マーケティングを横断して、Connected Carや新しい乗車体験における推進のリーダーであり、フォードが接続性という観点から顧客に提供する製品、サービス、経験について今まではとは違った考え方をしている。
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1 接続性の3つの様相:
Connected Carやサービスに関して、フォードは、接続性を3つの様相に分けている。
Beamed In
Brought In
Built InBeamed In
これはもっとも基本的な接続形式で、AMラジオの時代から今日の衛星ラジオ、交通情報、天候情報サービスのような高度なものまで含んで、車に電波で送信される形式である。Brought In
このタイプの接続性は、ユーザーが自動車に持ち込んだスマートフォン上のコンテンツ、通信能力、メディア、コンタクト先を最大限活用することである。これはフォードが、消費者は車の中でもネット環境への接続を望むはずだという先見性に基づいて、2007年以降行ってきたことである。
フォードは、ユーザーがハンドルから手を離さずに、前を向いた状態を保つことができるように、音声を最大限活用することで安全でシームレスな形でこれを可能にさせている。
Built In
第三の接続性の側面である、Built Inは、ネットワーク上の独立のノードとしての車であり、それ自体で、IoTに参加し、ロック、アンロック、リモートでのエンジンオンなどができるような車のリモート操作を可能するために、情報の送受信を行う能力を強化してきている。2.一回きりのトランザクションから長期的な顧客との親密性の獲得へ
自動車産業は歴史的に、「メーカーは顧客に自動車を提供し、その対価でお金をもらうという一回きりの取引」として顧客関係をとらえてきた。
所有期間、利用期間内の継続的な顧客関係性というものは本当の意味では存在しなかった。
フォードは今、顧客とのつながりを保つ必要のあるサービスや経験を理解しようと努力している。そして自動車と顧客の両方と長期的な関係を構築しようとしている。
Ford Focus Energiはその好例である。電気自動車において重要なのは充電の問題である。電源の状態や、目的地までにどの程度の電源が必要かなどの情報が重要になる。
自社のモバイルアプリを使って、フォードは顧客がこれらの状況を理解し、それを意味のあるかたちの情報に変えるのを可能にしている。たとえば、特定の目的地がある場合は、そこまで電池が持つか、あるいは、目的地への経路の途中で充電可能なポイントはあるか等の情報がわかるようにしている。
3.自動車はソフトウェアプラットフォームになる。
Butlerによれば、最近は自動車の価値のほぼ90%が、ハードウェアで占められているという。伝導機構、サスペンション、ボディ、インテリア。そして残りの10%がソフトウェアとコントロールモジュールなのである。今後は、この比率が50%ハードウェア、他の50%がソフトウェアとコンテンツからもたらされる経験の価値が占めることになるだろう。
自動車の価値がハードウェアからソフトウェアや乗車経験に移行するにつれて、自動車会社は、物理的な乗車時間を超える継続的関係を消費者と結ぶことが可能になる。
これによってフォードのような会社は継続的繋がりが可能になり、ソフトウェアが可能にする、継続的に改善を加えるというメリットも享受することができるようになるのだ。
4.プライバシーとセキュリティが第一
顧客の親密性を支えるイノベーションを構築し、ドライバー、乗客とフォードの関係をより強くするためにソフトウェア技術を活用することに加える中で、セキュリティという観点からは大きな責任を負うことになる。信頼を構成する二つの要因はプライバシーとセキュリティである。
プライバシー面では、フォードは顧客情報を自分たちが顧客のために管理すると考えている。
セキュリティ面では、自動車、移動体ネットワーク、車内ネットワーク、モバイルアプリがより接続性を強めるにつれて、脅威が指数的に高まることを理解している。フォードにとって、ベストプラクティスだけではなく、暗号、Air-gap、署名ID、認証のような点でのリーダーシップを取る必要があることを認識している。
この分野での能力と専門性を急激に学習し、成長するために、フォードは、自分たちのまわりで生じていることからメリットを享受することができると信じている。
5.モビリティソリューションは多変数解析に
ソフトウェアベースの車両は、それぞれが、かなり異なっており、開発して、常に改善する必要があり、車内プロセスを定期的にプログラムするモデルから、継続的にチームによって改善するモデルにシフトさせる必要がある。
ハフィントンポスト The Blog By Vala Afshar
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